加齢黄斑変性の初期症状と治療法|放置すると失明リスクも
2025/12/16
「最近、ものがゆがんで見える」「視界の中心が暗くなってきた」・・・そんな症状に心当たりはありませんか?
それは、加齢黄斑変性という病気のサインかもしれません。加齢黄斑変性は、50歳以上の方に多く見られる目の病気で、放置すると失明につながる可能性もある深刻な疾患です。
横浜市保土ケ谷区の梅の木眼科クリニックでは、加齢黄斑変性をはじめとする網膜疾患の診療に力を入れています。大学病院や市中病院で15年以上の経験を持つ熊谷悠太院長が、診察から治療、術後のフォローまで一貫して対応しています。
この記事では、加齢黄斑変性の初期症状から治療法、予防方法まで、眼科専門医の視点から詳しく解説します。早期発見・早期治療が視力を守る鍵となりますので、ぜひ最後までお読みください。
加齢黄斑変性とは?|目の中心部がダメージを受ける病気
加齢黄斑変性は、目の網膜の中心部にある「黄斑」という場所が加齢とともにダメージを受け、視力が低下する病気です。
黄斑は、ものを見る力をつかさどる重要な細胞が集中している場所です。
私たちは見たいものに黄斑が向くように、無意識に目の向きを変えています。そのため、黄斑が傷んでしまうと、視界の中央の見え方に異常をきたすことになります。
日本では、50歳以上の約1.3%の方がこの病気を抱えており、視覚障害(失明)の原因の第4位となっています。欧米では成人の失明原因の第1位とされ、日本でも高齢化と生活の欧米化により患者数が増加しています。
黄斑の役割と重要性
黄斑は直径わずか1.5~2mmの小さな領域ですが、視力の中心として極めて重要な役割を果たしています。細かいものを見たり、色を識別したりする機能が集中しており、視力1.0を得るには黄斑部が健全でなければなりません。
黄斑部が障害されると、周囲は見えても細かいものの識別ができなくなります。読書や運転、手芸など、日常生活の様々な場面で支障が出てしまうのです。
日本人に増加している理由
以前は日本人には比較的少ないといわれていた加齢黄斑変性ですが、近年は急速に増加しています。
その背景には、人口の高齢化と生活習慣の欧米化があると考えられています。
福岡県久山町での調査によると、1998年では50歳以上の有病率は0.87%でしたが、9年後には1.3%に上昇しました。女性より男性に約3倍多くみられるという特徴もあります。
加齢黄斑変性の2つのタイプ|「萎縮型」と「滲出型」
加齢黄斑変性には、「萎縮型」と「滲出型」という2つのタイプがあります。それぞれ進行の速さや治療方法が異なるため、正しく理解することが大切です。
萎縮型加齢黄斑変性
萎縮型は、黄斑部の網膜色素上皮がだんだんと委縮し、それに伴って黄斑部の網膜の機能が低下していくタイプです。
進行はゆっくりで、欧米ではこの病型が多いとされています。
萎縮型の場合は特に治療する必要はありませんが、滲出型に移行する可能性があるため、定期的な検査による経過観察が必要です。
滲出型加齢黄斑変性
滲出型は、脈絡膜から網膜に向かって新しい血管(新生血管)が作られるタイプです。日本人に多いのがこの滲出型で、失明のリスクが高いのも特徴です。
新生血管は通常の血管よりもろくて破れやすいため、血液中の水分がにじみ出てきたり、血管が破れて出血が起きたりします。その結果、黄斑部がむくんでしまったり、傷んでしまったりして、ゆがんで見えたり視力が低下したりします。
急激に視力が低下する場合もあり、早期発見・早期治療が極めて重要です。
一度細胞が破壊されると再生することはできないため、症状が進行する前に適切な治療を受けることが視力を守る鍵となります。
見逃せない初期症状|こんな見え方に注意
加齢黄斑変性の初期症状を早期に発見することが、視力を守るために最も重要です。
以下のような症状がある場合は、すぐに眼科を受診してください。
ゆがんで見える(変視症)
多くの場合、初期にはものが歪んで見えるという特徴的な症状が起こります。これは黄斑部という網膜の中央が歪んでいるためで、視野の真ん中、つまり見ようとしているところは歪んでいるものの、それ以外の周辺部分は正しく見えます。
直線が波打って見えたり、格子状のものが部分的にゆがんで見えたりする場合は要注意です。
中心が暗く見える(中心暗点)
症状が進行すると、見たい部分が黒くなって見えなくなります。視野の中心部が暗くなったり、欠けたりする範囲が広くなっていきます。
この段階になると、読書や細かい作業が困難になり、日常生活に大きな支障が出てきます。
視力低下や色覚異常
黄斑は視力に重要な場所であるため、黄斑が傷むことで視力が低下します。萎縮型ではゆっくりと低下していきますが、滲出型では急激に視力が低下することもあります。
また、黄斑は色の識別にも重要な場所であるため、進行すると色の識別に異常をきたすこともあります。コントラストが低下して、ものが薄く見えることもあります。
片目ずつチェックすることの重要性
ふだん私たちは両目でものを見ているため、片目で異常が生じても普段の生活では見え方の変化に気がつかないことがあります。時々、片目ずつの見え方を確認することも大事です。
片目を手で覆い、もう一方の目で格子状のものや直線を見て、歪みがないかチェックしてみてください。
放置すると失明のリスクも|早期治療の重要性
加齢黄斑変性は、放置すると失明につながる可能性がある深刻な病気です。日本人の中途失明の原因の第4位とされており、決して軽視できません。
失明リスクが高い理由
黄斑は、ものを見る力をつかさどる重要な細胞が集中しています。滲出型の場合、新生血管という異常な血管が発生し、黄斑にダメージを与えていきます。
新生血管によって黄斑の組織にダメージを受け、細胞が破壊されていくのです。
一度細胞が破壊されると再生することはできません。そのままものを見るのに必要な細胞が破壊され続けると、視力が低下し、徐々に正常な見え方ができなくなってしまいます。
症状の進行速度
萎縮型と診断された場合は症状の進行は遅く、治療ではなく定期検査で経過観察を行なっていきます。しかし、失明のリスクに該当するのは滲出型の場合です。
滲出型は萎縮型と異なり、急激に視力が低下していきます。また、加齢黄斑変性の恐ろしさは、萎縮型と診断されて安心していたら、滲出型に変化するケースもあることです。そのため、定期検査が必要になっていくのです。
早期発見が視力を守る鍵
一度傷ついた細胞は治らない上に、人によって進行速度が違うので、早めの検査と治療が大切です。早期に発見できた場合、ある程度進行をくいとめ、被害を最低限度にすることができます。
梅の木眼科クリニックでは、専門スタッフによる精密検査体制を完備しており、早期発見・早期治療に努めています。
少しでも気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。
加齢黄斑変性の検査方法|正確な診断のために
加齢黄斑変性を正確に診断するために、眼科ではいくつかの検査を行います。これらの検査により、病気のタイプや進行度を把握し、適切な治療方針を決定します。
アムスラーチャートによる自己チェック
アムスラーチャートは、格子状の図を使って視野の歪みをチェックする簡単な方法です。30cm離れて片目ずつチェックし、老眼鏡をかけたままチェックします。
加齢黄斑変性の場合、線がぼやけて薄暗く見えたり、中心がゆがんで見えたり、部分的に欠けて見えたりします。自宅でも定期的にチェックすることで、早期発見につながります。
視力測定
通常の小数視力検査表に加え、ETDRSチャートという特殊な視力検査表を使用することがあります。ETDRSチャートでは、視力が低い方のわずかな視力変化が、小数視力検査表よりわかります。
視力の変化を正確に把握することで、治療効果の判定や病気の進行度を評価できます。
眼底検査
細隙灯顕微鏡による検査では、眼底に細くて強い光を当て、網膜の病気の部分を拡大して調べます。滲出型加齢黄斑変性の場合、滲出液、出血、網膜のむくみなどの症状が見つかります。
眼底カメラにより、眼底のカラー写真を撮影します。散瞳薬を用いる場合と、暗い部屋での自然散瞳を利用する場合があります。
光干渉断層計(OCT)による検査
網膜の断面の状態を詳しく調べます。滲出型加齢黄斑変性の場合、網膜剥離(網膜がうき上がる)、網膜のむくみ、新生血管(異常な血管)などが見つかります。
OCT検査は非侵襲的で、網膜の微細な構造変化を捉えることができる優れた検査方法です。OCTでは形態的な異常を見るのに対し、OCTA(光干渉血管断層撮影)では血流を撮影することで新生血管の状態を確認することができます。
そのためOCTとOCTAを組み合わせて経過を見ていくことが大変重要です。
蛍光眼底造影検査
蛍光色素を含んだ造影剤を腕(静脈)から注射し、眼底カメラで眼底の血管の異常を検査します。新生血管(異常な血管)や、新生血管からもれた血液がどこにあるのかがわかります。
フルオレセイン蛍光眼底造影とインドシアニングリーン蛍光眼底造影の2種類があり、それぞれ異なる情報を提供します。
加齢黄斑変性の治療法|視力回復の可能性も
加齢黄斑変性の治療方法は、病気のタイプや進行度によって異なります。近年は治療が進歩し、視力の維持や回復も目指せるようになっています。
抗VEGF療法(抗VEGF抗体硝子体内注射)
滲出型加齢黄斑変性の最も効果的な治療法とされているのが、抗VEGF療法です。
抗VEGF抗体硝子体内注射という注射を打って、むくみや炎症、出血など悪い変化を起こす新生血管を生成するたんぱく質(血管内皮細胞増殖因子)を抑制し、新生血管を弱らせ進行を防ぎます。
抗VEGF療法では、加齢黄斑変性によって低下した視力が改善したり、悪化する前に治療することが可能になりました。現在の最も効果的な治療法だと言われています。
光線力学療法(PDT)
光感受性物質を静脈注射した後、特殊なレーザーを照射して新生血管を閉塞させる治療法です。状態によっては抗VEGF療法と併用することで、症状をできる限り抑えたり、注射の間隔を伸ばしていきます。
新生血管の光凝固法(レーザー光凝固)
レーザーによる光凝固法も選択肢の一つです。新生血管をレーザーで焼き固めることで、出血や滲出を抑えます。
硝子体手術
重症例や合併症がある場合には、硝子体手術が必要になることもあります。状態に応じて最適な治療法を選択します。
梅の木眼科クリニックでの治療
梅の木眼科クリニックでは、加齢黄斑変性をはじめとする網膜疾患の診療に対応しています。
15年以上の経験を持つ熊谷悠太院長が、診察から治療、術後のフォローまで一貫して対応し、患者様の目と気持ちの両方に寄り添った医療を提供しています。
加齢黄斑変性の予防法|今日からできること
加齢黄斑変性は完全に予防することは難しいですが、リスクを減らすために今日からできることがあります。
禁煙の重要性
喫煙は加齢黄斑変性のリスクを高める主要な要因となります。たばこを止めるのが難しい方は、禁煙外来などを利用して、早めに禁煙を始めることをおすすめします。
喫煙が大いに関与していることが研究で明らかになっており、禁煙は非常に重要な予防策です。
紫外線からの保護
紫外線、特に太陽の光は、網膜に悪影響を及ぼし、加齢黄斑変性のリスクを増加させます。日常生活でサングラスを使用して、目を守る習慣を持ちましょう。
紫外線による暴露は、変性への移行を促進していると考えられています。
バランスの良い食事
バランスの良い食事は目の健康にも寄与します。活性酸素の影響を軽減する抗酸化ビタミンやミネラルを多く含む食品、例えば、ミカン、大豆、玄米、ニンジン、カボチャ、牡蠣、海藻などを意識的に摂取しましょう。
特に、黄斑を守るルテインが含まれるホウレンソウやケール、ブロッコリー、さらにオメガ3脂肪酸が豊富な魚類も積極的に摂ることが推奨されます。
野菜、果物など抗酸化作用のある食物の不足や、"悪玉"と呼ばれる脂肪の過剰摂取は避けましょう。
適度な運動と体重管理
運動不足や肥満も加齢黄斑変性のリスク要因とされています。適度な運動習慣を持ち、適正体重を維持することが大切です。
生活習慣病の管理
高血圧症や脂質異常症などの生活習慣病も、発症リスクに関わっていると言われています。これらの疾患をしっかり管理することも予防につながります。
定期的な眼科検診
50歳以上の方は、症状がなくても定期的に眼科検診を受けることをおすすめします。早期発見・早期治療が視力を守る最善の方法です。
まとめ|見える喜びを取り戻すために
加齢黄斑変性は、50歳以上の方に多く見られる目の病気で、放置すると失明につながる可能性もある深刻な疾患です。しかし、早期に発見し適切な治療を受けることで、視力の維持や回復も目指せるようになっています。
「最近、視界がかすむ」「ものがゆがんで見える」「中心が暗く見える」・・・これらは加齢黄斑変性のサインかもしれません。少しでも気になる症状があれば、すぐに眼科を受診してください。
横浜市保土ケ谷区の梅の木眼科クリニックでは、加齢黄斑変性をはじめとする網膜疾患の診療に力を入れています。15年以上の経験を持つ熊谷悠太院長が、診察から治療、術後のフォローまで一貫して対応し、患者様の不安を丁寧に取り除き、"見える喜び"を再び感じていただける医療を提供しています。
加齢黄斑変性や目の不調でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたの目と気持ちの両方に寄り添い、最善の治療をご提案いたします。
【著者情報】熊谷悠太
日本眼科学会認定 眼科専門医
2003年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業、聖マリアンナ医科大学病院眼科学教室入局
2009年 聖マリアンナ医科大学大学院博士課程修了、桜ヶ丘中央病院眼科部長
2016年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院眼科主任医長
2019年 梅の木眼科クリニック開院

