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眼科医が解説|ブルーライト対策の真実と目を守る正しい方法

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眼科医が解説|ブルーライト対策の真実と目を守る正しい方法

眼科医が解説|ブルーライト対策の真実と目を守る正しい方法

2025/12/16

スマートフォンやパソコンが手放せない現代社会において、「ブルーライト」という言葉を耳にする機会が増えました。

目の健康を守るために、ブルーライトカット眼鏡を購入された方も多いのではないでしょうか。

しかし近年、ブルーライト対策に関する科学的な見解が大きく変化しています。眼科医として15年以上の経験を持つ私が、最新のエビデンスに基づいた「ブルーライトの真実」と、本当に目を守るために必要な対策をお伝えします。

 

ブルーライトとは何か・・・基本を正しく理解する

ブルーライトは、波長380~500nm程度の可視光線の一部です。

太陽光にも豊富に含まれており、私たちの体内時計を整える重要な役割を果たしています。
スマートフォンやパソコン、LED照明からも発せられますが、実は太陽光から浴びるブルーライトの量と比べると、デジタル機器から発せられる量はごくわずかです。

多くの方が誤解されているのは、「ブルーライト=有害」という認識です。 ブルーライトは本来、人間の健康維持に欠かせない光なのです。日中に適度なブルーライトを浴びることで、体内時計が正常に機能し、夜には自然な眠気が訪れます。
問題となるのは、夜遅くまで強い光を浴び続けることによる「生活リズムの乱れ」です。

ブルーライトが体に与える本当の影響

米国眼科学会の見解によれば、デジタル機器から発せられるブルーライトが網膜に障害を生じることはないレベルであり、失明などの深刻な眼疾患を引き起こす科学的根拠は現時点で確認されていません。

ただし、夜間に長時間ブルーライトを浴びると、メラトニンの分泌が抑制され、睡眠の質が低下する可能性があります。
メラトニンは脳が暗闇に反応して生成するホルモンで、眠気を促進し、体内時計の調整に役立ちます。

夜遅くまでスマートフォンを見続けると、体が「まだ日中だ」と錯覚してしまい、結果として寝つきが悪くなるのです。

若年層の目の不調が増えている背景

近年、若い世代でも目の疲れや不調を訴える方が増加しています。

その主な原因は、ブルーライトそのものではなく、長時間のデジタル機器使用による「眼精疲労」や「ドライアイ」です。画面を見続けることでまばたきの回数が減り、目の表面が乾燥しやすくなります。また、近距離を長時間見続けることで、目のピント調節機能に負担がかかるのです。

ブルーライトカット眼鏡の効果・・・科学的エビデンスから見る真実

ブルーライトカット眼鏡は、デジタル端末使用時の眼精疲労軽減や睡眠障害の改善を謳って販売されています。
しかし、最新の科学的研究では、これらの効果に疑問が投げかけられています。

眼精疲労軽減効果は認められず

2021年に発表された国際的な研究レビューでは、ブルーライトカット眼鏡には眼精疲労を軽減する効果が全くないと報告されています。

複数の国で実施されたランダム化比較試験のデータを検証した結果、ブルーライトカット眼鏡を装用しても、通常の眼鏡と比べて目の疲れに有意な差は見られませんでした。

そもそも、ブルーライトカット眼鏡でカットできるのは、デジタル機器から放出されるブルーライトの10~25%程度に過ぎません。しかも、デジタル機器から浴びるブルーライトは、自然光から浴びる量のわずか1000分の1程度なのです。

睡眠の質への影響も限定的

就寝前のブルーライトカット眼鏡装用が睡眠の質を改善する可能性は指摘されていますが、その効果は限定的です。

より効果的なのは、就寝2時間前からデジタル機器の使用を控えることです。ブルーライトカット眼鏡に頼るよりも、生活習慣そのものを見直すことが重要だと考えられます。

小児への装用には慎重な判断が必要

日本眼科学会をはじめとする6つの学協会は、小児にブルーライトカット眼鏡を装用させることに対して慎重意見を発表しています。

その理由は、日中にブルーライトをカットすることで、かえって近視進行のリスクが高まる可能性があるためです。
小児にとって太陽光は心身の発育に好影響を与えるものであり、十分な太陽光を浴びないと近視が進行しやすくなることが分かっています。

本当に目を守るために必要な対策とは

ブルーライトカット眼鏡に頼るのではなく、日常生活の中で実践できる効果的な目の健康維持法があります。 眼科医として、私が患者様に最もお勧めしているのは「20-20-20ルール」です。

20-20-20ルールを実践する

米国眼科学会が推奨する「20-20-20ルール」は、デジタル機器使用時の目の疲れを軽減する効果的な方法です。

具体的には、20分間デジタル端末の画面を見たら、20フィート(約6メートル)離れたところを20秒間見るというものです。この習慣を取り入れることで、目のピント調節機能の負担が軽減され、眼精疲労の予防につながります。

まばたきを意識的に増やす

画面を見続けるとまばたきの回数が通常の3分の1程度に減少し、目の表面が乾燥してドライアイを引き起こします。

意識的にまばたきを増やすことで、涙の分泌が促され、目の潤いが保たれます。特に集中して作業をしているときほど、まばたきを忘れがちですので注意が必要です。

デジタル機器の設定を最適化する

スマートフォンやパソコンには、画面の明るさや色温度を調整する機能が備わっています。

夜間モードやナイトシフト機能を活用することで、夕方以降の画面から発せられるブルーライトを減らすことができます。また、画面の明るさを周囲の環境に合わせて調整することも、目の負担軽減に効果的です。

適切な作業環境を整える

画面との距離は40~50cm程度を保ち、画面の上端が目の高さよりやや下になるように調整しましょう。

また、室内の照明は画面よりも明るすぎず、暗すぎない程度に調整することが大切です。窓際の明るい環境で作業することも、産業衛生分野では推奨されています。

白内障とブルーライトの関係・・・正しい知識を持つ

「ブルーライトが白内障の直接原因になる」という情報を目にすることがありますが、これは誤解です。 現時点で、ブルーライトが白内障を直接引き起こすという科学的証拠は限定的です。

白内障の主な原因と予防

白内障は、加齢や紫外線の蓄積、代謝異常などが主な原因で、水晶体が白く濁る病気です。

60歳を超えると多くの方に見られ、80代ではほぼ全員に何らかの兆候が確認されています。
白内障の予防には、紫外線対策が最も重要です。外出時にはUVカット機能のあるサングラスや帽子を着用し、目を紫外線から守りましょう。

白内障手術後のブルーライト対策

白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを挿入します。

手術後は、ブルーライトへの感受性が変化する場合があります。当院では、患者様の生活スタイルや希望に合わせて、単焦点レンズや多焦点レンズを選択していただけます。

イエロー眼内レンズは、ブルーライトをある程度カットする機能を持っており、術後の視覚変化を考慮した選択肢の一つです。

目の健康を守るライフスタイルの提案

ブルーライト対策だけでなく、総合的な目の健康維持には、日常生活全体の見直しが重要です。

栄養バランスの取れた食事を心がける

目の健康には、ビタミンA、C、E、ルテイン、ゼアキサンチンなどの栄養素が重要です。

緑黄色野菜や魚類、ナッツ類をバランスよく摂取することで、目の老化を遅らせる効果が期待できます。
ただし、「ブルーベリーで視力が改善する」という科学的根拠は乏しく、目の疲れが軽減する程度の効果しか期待できません。

定期的な眼科検診を受ける

目の病気は初期段階では自覚症状がないことが多く、気づいたときには進行していることがあります。

40歳を過ぎたら、年に1回は眼科検診を受けることをお勧めします。緑内障や加齢黄斑変性、糖尿病網膜症などは、早期発見・早期治療が視力維持の鍵となります。

十分な睡眠と休息を確保する

目の疲れは全身の疲労とも密接に関係しています。

質の良い睡眠を確保することで、目の回復力も高まります。就寝前のデジタル機器使用を控え、リラックスできる環境を整えることが大切です。

まとめ|正しい知識で目の健康を守りましょう

ブルーライトは決して「悪者」ではなく、私たちの健康維持に必要な光です。

ブルーライトカット眼鏡に過度な期待をするのではなく、20-20-20ルールの実践や、まばたきの意識、適切な作業環境の整備など、日常生活の中でできる対策を取り入れることが重要です。

特に小児の場合は、日中に十分な太陽光を浴びることが近視予防につながります。
ブルーライトカット眼鏡の装用は、かえって発育に悪影響を与える可能性があるため、慎重な判断が必要です。

「最近、視界がかすむ」「目が疲れやすい」「夜の運転が不安」といった症状がある場合は、白内障や緑内障などの病気のサインかもしれません。

梅の木眼科クリニックでは、患者様一人ひとりの目の状態を丁寧に診察し、最適な治療法をご提案しています。 見えづらさを我慢せず、まずは一度ご相談ください。

【著者情報】熊谷悠太

日本眼科学会認定 眼科専門医
2003年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業、聖マリアンナ医科大学病院眼科学教室入局
2009年 聖マリアンナ医科大学大学院博士課程修了、桜ヶ丘中央病院眼科部長
2016年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院眼科主任医長
2019年 梅の木眼科クリニック開院

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