医療法人柔敦

白内障手術後の目薬はいつまで?回復を早める正しい点眼方法を医師が解説

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白内障手術後の目薬はいつまで?回復を早める正しい点眼方法を医師が解説

白内障手術後の目薬はいつまで?回復を早める正しい点眼方法を医師が解説

2025/12/18

白内障手術を受けられた患者様から、「目薬はいつまで続ければいいのでしょうか?」というご質問をよくいただきます。

手術が無事に終わっても、術後のケアを怠ると感染症や炎症のリスクが高まります。

特に目薬による点眼治療は、回復を早め、合併症を防ぐために非常に重要です。今回は、白内障手術後の目薬の使用期間や正しい点眼方法について、眼科専門医の立場から詳しく解説します。

 

白内障手術後の目薬が必要な理由

白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを挿入します。

手術時の切開創は約2.4mmと非常に小さく、縫合の必要もありません。しかし、小さいとはいえ目の中に器具を入れる手術ですので、術後は必ず炎症が起こります。

また、傷口から細菌が侵入するリスクもゼロではありません。そのため、術後の点眼薬は「感染症の予防」と「炎症の抑制」という2つの重要な役割を担っています。

感染症を防ぐための抗菌薬

手術後、最も注意しなければならないのが「術後眼内炎」という感染症です。

これは創口から細菌が侵入し、眼内で炎症を起こす重篤な合併症で、視力に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
現在の手術技術では発症率は非常に低いものの、万が一発症すると大きな問題となります。

そのため、抗菌薬の点眼は術後早期から欠かせません。一般的には「ベガモックス(モキシフロキサシン)点眼液」などのニューキノロン系抗菌薬が処方され、細菌のDNA合成を阻害することで増殖を防ぎます。

炎症を抑えるステロイドと非ステロイド系抗炎症薬

手術による組織の損傷は、必ず炎症反応を引き起こします。

この炎症を放置すると、目の赤みやかゆみだけでなく、「嚢胞様黄斑浮腫」という網膜のむくみを引き起こすことがあります。黄斑は視力の中心を担う部分ですので、ここが腫れると視力低下につながります。

そのため、「リンデロン点眼液」などのステロイド系抗炎症薬と、「ブロナック点眼液」などの非ステロイド系抗炎症薬を併用し、炎症を効果的に抑えます。これらの目薬は、術後の回復を早めるだけでなく、長期的な視力の質を守るためにも重要です。

白内障手術後の目薬はいつまで続けるのか

多くの患者様が気にされるのが、「目薬をいつまで続ければいいのか」という点です。

一般的には、術後約3ヵ月間の点眼が推奨されています。ただし、これはあくまで目安であり、患者様の目の状態や回復の経過によって変わります。

術後1週間は最も重要な時期

手術直後から1週間は、感染症のリスクが最も高い時期です。

この期間は、3種類の目薬を1日に複数回(通常は1日3〜5回)点眼していただきます。点眼を忘れたり、回数を減らしたりすると、感染症や炎症のリスクが高まりますので、必ず医師の指示通りに続けてください。

また、この時期は洗顔や洗髪も控えていただき、目に水や異物が入らないよう細心の注意を払う必要があります。

術後1ヵ月までの点眼スケジュール

術後1週間を過ぎると、点眼回数は徐々に減っていきます。 通常、1週間後の診察で経過が良好であれば、点眼回数を1日3回程度に減らすことが多いです。
ただし、目薬の種類によっては継続が必要なものもありますので、自己判断で中止せず、必ず医師の指示に従ってください。

この時期になると、洗顔や洗髪も許可されることが多く、日常生活への復帰が進みます。しかし、目をこすったり、強く押さえたりする行為は避けていただく必要があります。

術後3ヵ月まで継続する理由

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正しい点眼方法で効果を最大化する

目薬は正しい方法で点眼しないと、十分な効果が得られません。

特に高齢の患者様の中には、点眼が上手くできていない方も少なくありません。ここでは、効果的な点眼方法をステップごとに解説します。

点眼前の準備

まず、手をしっかりと洗い、清潔な状態にします。 汚れた手で目の周りを触ると、細菌感染のリスクが高まります。

また、点眼薬の容器の先端が目やまつ毛に触れないよう注意してください。容器が汚染されると、目薬自体が感染源になる可能性があります。

点眼の手順

上を向いた状態で、下まぶたを軽く引き下げます。 この時、目薬の容器を目の真上に持ってきて、1滴だけ点眼します。
多く入れても効果は変わりませんし、むしろ目から溢れて皮膚の炎症を引き起こすことがあります。

点眼後は、1〜2分間目を閉じて、薬が目全体に行き渡るようにします。 この時、目をパチパチさせると薬が流れ出てしまいますので、静かに閉じておくことが大切です。

複数の目薬を使う場合の注意点

白内障手術後は、通常3種類の目薬が処方されます。
複数の目薬を続けて点眼すると、先に入れた薬が後から入れた薬で流れ出てしまいます。そのため、目薬と目薬の間は5分以上空けることが推奨されています。
この間隔を守ることで、それぞれの薬が十分に吸収され、相互の影響を最小限に抑えることができます。

点眼のタイミングを忘れないよう、スマートフォンのアラーム機能を活用されている患者様も多くいらっしゃいます。

術後の生活で注意すべきポイント

目薬の点眼だけでなく、日常生活での注意点を守ることも回復を早めるために重要です。

洗顔・洗髪・入浴の制限

手術した日は入浴やシャワーを控え、安静を保ってください。
翌日からは首から下のシャワーが可能になりますが、洗顔や洗髪は術後5日〜1週間は控えていただきます。どうしても必要な場合は、美容室や理容室で仰向けの状態で目に水が入らない様に洗髪してもらうことをお勧めします。

洗顔は固く絞ったタオルやウェットティッシュで拭く程度にとどめ、目の周りは特に慎重に扱ってください。

運動や仕事への復帰

デスクワークや読書、テレビ視聴などは、術後翌日から無理のない範囲で再開していただけます。
ただし、激しい運動や力仕事、接触のあるスポーツは1ヵ月程度控えてください。また、車の運転は視力が安定してから医師の許可を得て再開することが安全です。

畑仕事や工事現場など、埃っぽい環境での作業も1ヵ月程度は避けていただくことが望ましいです。

保護メガネの使用

術後約1週間は、就寝時に保護メガネ(ゴーグル)を装着していただきます。 これは、無意識に目をこすってしまったり、不意にぶつけてしまったりすることを防ぐためです。
以前は眼帯が使われていましたが、現在は両目で見ることができる保護メガネの方が、転倒リスクが低く安全性が高いとされています。

術後の経過観察と通院スケジュール

白内障手術後は、定期的な通院が必要です。
これは、感染症や炎症の早期発見、そして視力の回復状況を確認するために欠かせません。

手術翌日の診察は必須

手術翌日の診察は、最も重要な検診の一つです。 この時点で感染症の兆候がないか、眼圧が正常範囲にあるか、眼内レンズの位置が適切かなどを確認します。
万が一、激しい痛みや視力の急激な低下を感じた場合は、予約を待たずにすぐにご連絡ください。

その後の通院スケジュール

一般的には、手術翌日、3日後、1週間後、1ヵ月後と、徐々に間隔を空けながら通院していただきます。

患者様の状態やリスク要因によっては、より細かい間隔で診察させていただくこともあります。特に糖尿病や緑内障などの持病がある方、白内障が高度に進行していた方は、慎重な経過観察が必要です。

メガネの作り替えタイミング

術後の視力は、約2週間〜1ヵ月で安定してきます。 メガネが必要な方は、この時期に医師が処方箋を作成しますので、それをもとに新しいメガネを作っていただくことをお勧めします。

術後すぐにメガネを作ると、視力が変化して合わなくなる可能性がありますので、焦らずに待つことが大切です。

後発白内障について知っておくべきこと

白内障手術を受けた後、数ヵ月から数年経ってから「また見えにくくなった」と感じる方がいらっしゃいます。

これは「後発白内障」と呼ばれる現象で、眼内レンズを支えている水晶体嚢が濁ってくることが原因です。

後発白内障の症状

後発白内障になると、手術前のように「まぶしく感じる」「視界がかすむ」といった症状が現れます。
これは白内障が再発したわけではなく、水晶体嚢の濁りによるものです。比較的よく見られる現象で、特に心配する必要はありません。

レーザー治療で簡単に改善

後発白内障が発症した場合、レーザー治療で簡単に取り除くことができます。 手術や入院の必要はなく、外来で数分の処置で視力が回復します。治療後は再び濁ることはほとんどありませんので、安心してください。

ただし、後発白内障を予防する目薬は現在のところ存在しませんので、定期的な検診で早期発見することが大切です。

まとめ:術後の目薬と生活管理が視力回復の鍵

白内障手術は、現代医療において非常に安全で効果的な治療法です。
しかし、手術が成功しても、術後のケアを怠ると感染症や炎症のリスクが高まり、せっかくの視力回復が台無しになる可能性があります。特に目薬による点眼治療は、約3ヵ月間しっかりと続けることが重要です。

点眼を忘れずに、医師の指示通りに続けてください。また、洗顔や洗髪、運動などの生活制限も、感染予防のために必要な期間は守っていただくことが大切です。
定期的な通院で経過を確認し、何か気になる症状があればすぐにご相談ください。適切な術後管理によって、「見える喜び」を長く保つことができます。

梅の木眼科クリニックでは、白内障手術から術後のフォローまで、院長が一貫して責任を持って対応しています。 西谷駅から徒歩7分、駐車場も完備しており、通院にも便利です。

白内障や目の不調でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

【著者情報】熊谷悠太

日本眼科学会認定 眼科専門医
2003年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業、聖マリアンナ医科大学病院眼科学教室入局
2009年 聖マリアンナ医科大学大学院博士課程修了、桜ヶ丘中央病院眼科部長
2016年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院眼科主任医長
2019年 梅の木眼科クリニック開院

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