白内障手術のレンズに寿命はある?交換が必要なケースと注意点
2026/02/10
白内障手術で使用する眼内レンズとは
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、その代わりに人工の眼内レンズを挿入します。
このレンズは「眼内レンズ(IOL:Intraocular Lens)」と呼ばれ、目の中に半永久的に留まるものです。
水晶体の外側を包む袋(水晶体嚢)の中に固定され、光を適切に屈折させることで視力を回復させる役割を担っています。
眼内レンズには大きく分けて「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」の2種類があります。
単焦点レンズは遠方または近方のどちらか一方にピントが合うタイプで、保険診療の対象です。多焦点レンズは複数の距離にピントが合うため、眼鏡への依存を減らせる可能性がありますが、自由診療となります。
当院では患者様のライフスタイルや見え方のご希望を丁寧に伺い、最適なレンズ選択をサポートしています。
眼内レンズの寿命は半永久的
結論から申し上げますと、眼内レンズには基本的に寿命がありません。
現在使用されている眼内レンズの耐用年数は、人間の寿命よりも長いとされており、半永久的に使用できる設計になっています。
眼内レンズの素材と耐久性
眼内レンズの主な素材はアクリル樹脂です。
この素材は生体適合性が高く、長期間目の中に留まっても劣化や変質が起こりにくい特性を持っています。
正式な認可を受けた眼内レンズは厳しい耐久性試験をクリアしており、40〜50年以上の使用にも耐えられることが確認されています。
そのため、一度挿入した眼内レンズは原則として交換の必要がなく、生涯にわたって使用し続けることができます。
交換が不要な理由
眼内レンズが半永久的に使える理由は、その特殊な環境にあります。
目の中は外気に触れることがなく、紫外線や物理的な衝撃からも守られています。
また、レンズ自体が破損したり、劣化したりすることはほとんどありません。
通常のコンタクトレンズのように定期的な交換が必要ないため、患者様にとっても経済的な負担が少ない治療法といえます。
眼内レンズの交換が必要になるケース
眼内レンズは半永久的に使用できますが、例外的に交換が必要になる場合があります。
ここでは、どのような状況で再手術を検討するのかを詳しく解説します。
眼内レンズの位置がずれた場合
眼内レンズは水晶体嚢という袋の中に固定されていますが、この袋を支える「チン小帯」という繊維が弱くなると、レンズの位置がずれることがあります。
加齢や外傷、強度近視、落屑症候群などが原因で起こることが多く、レンズが大きくずれると視力低下や物が二重に見えるといった症状が現れます。
軽度のずれであれば経過観察で済む場合もありますが、高度なずれや目の奥に落下してしまった場合(脱臼)は、網膜や視神経を傷つける恐れがあるため、再手術が必要です。
術後の度数が合わなかった場合
白内障手術では、術前の検査データをもとに眼内レンズの度数を決定します。しかし、眼球の構造には個人差があり、計算式による予測と実際の見え方にずれが生じることがあります。
特に、想定よりも近視や遠視が残ってしまい、日常生活に支障が出る場合には、レンズの交換を検討することがあります。
ただし、眼内レンズの交換は手術後1〜2ヶ月以内、遅くても半年以内が望ましく、時間が経つとレンズが水晶体嚢に癒着してしまうため、交換が困難になります。
多焦点レンズの見え方に慣れない場合
多焦点眼内レンズは遠近両方にピントが合う便利なレンズですが、一部の方は術後の見え方に順応できないことがあります。
光のにじみ(ハロー)やまぶしさ(グレア)といった症状が強く出たり、期待していた見え方と異なったりする場合、単焦点レンズへの交換を希望されるケースがあります。
このような場合も、早期であればレンズ交換が可能ですが、時間が経過すると選択肢が限られてきます。
眼内レンズの混濁が生じた場合
まれに、眼内レンズ自体が経年変化で混濁することがあります。
これは「グリスニング」や「ホワイトニング」と呼ばれる現象で、レンズの種類によっては発生リスクがあります。
混濁が高度になると視力に影響を及ぼすため、レンズ交換が必要になることがあります。
ただし、近年では混濁リスクの低いレンズが主流となっており、当院でもこうしたリスクを考慮したレンズ選択を行っています。
眼内レンズ交換の時期とリスク
眼内レンズの交換を検討する場合、タイミングが非常に重要です。 手術後の経過時間によって、再手術の難易度や合併症のリスクが大きく変わってきます。
交換に適した時期
眼内レンズの交換は、白内障手術後1〜2ヶ月以内が最も適しています。
この期間内であれば、レンズがまだ水晶体嚢に完全に癒着していないため、比較的安全に取り出すことができます。手術時間も短く、患者様の体への負担も最小限に抑えられます。
逆に、手術後3ヶ月以上経過すると、レンズが水晶体嚢にしっかりと癒着してしまい、取り出しが困難なことがあります。
交換が難しくなる条件
以下のような状況では、眼内レンズの交換が難しくなります。
白内障手術後に後発白内障のレーザー治療(YAGレーザー)を受けた場合
初回の白内障手術時に合併症が起こった場合
手術後1年以上経過している場合
特に、YAGレーザー治療を受けると水晶体嚢に穴が開いてしまうため、レンズの固定が困難になり、交換手術のリスクが大幅に上がります。
再手術のリスク
眼内レンズの交換手術には、初回の白内障手術よりも高いリスクが伴います。
水晶体嚢の損傷、眼内出血、網膜剥離、眼圧上昇などの合併症が起こる可能性があります。また、交換後のレンズが希望通りの位置に固定できない場合もあります。
そのため、当院では再手術の必要性とリスクを十分に説明し、患者様が納得された上で治療方針を決定しています。
レンズ交換以外の対処法
眼内レンズの交換が難しい場合や、リスクを避けたい場合には、他の対処法も検討できます。
アドオン眼内レンズ(Add-On IOL)
すでに挿入されている眼内レンズを取り出さず、その前に2枚目のレンズを追加挿入する方法です。
度数のずれや乱視の矯正に有効で、手術時間も短く、リスクを抑えられるメリットがあります。ただし、すべてのケースに適用できるわけではなく、眼の状態によって判断が必要です。
眼鏡やコンタクトレンズでの調整
度数のずれが軽度であれば、眼鏡やコンタクトレンズで矯正することも可能です。
特に、遠方視力は良好だが近方が見づらい場合には、老眼鏡や遠近両用眼鏡を使用することで快適に過ごせる方も多くいらっしゃいます。
再手術のリスクを考慮すると、眼鏡での対応が最も安全で現実的な選択肢となることもあります。
経過観察
多焦点レンズのハロー・グレアなどの症状は、時間とともに脳が順応し、気にならなくなることがあります。
術後数週間から数ヶ月で改善されるケースも多いため、まずは経過を見守ることが大切です。症状が強い場合でも、日常生活に大きな支障がなければ、そのまま様子を見ることも選択肢の一つです。
白内障手術後の定期検診の重要性
眼内レンズを長く安全に使用するためには、術後の定期検診が欠かせません。
当院では、手術翌日、数日後、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後と段階的に診察を行い、見え方や回復の状態を丁寧に確認しています。
定期検診で確認すること
定期検診では、視力の回復状態、眼内レンズの位置、眼圧、角膜の状態、後発白内障の有無などをチェックします。
特に、眼内レンズの位置ずれは早期発見が重要で、定期的な検査によって異常を見逃さないようにしています。
また、術後の見え方に関する不安や疑問にもお答えし、患者様が安心して回復期間を過ごせるようサポートしています。
異常を感じたらすぐに相談を
定期検診の間隔が空いている時期でも、以下のような症状があればすぐにご相談ください。
急激な視力低下
物が二重に見える
目の痛みや充血
光が異常にまぶしく感じる
視野の一部が欠ける
これらは眼内レンズの位置ずれや、他の眼疾患のサインである可能性があります。
早期に対処することで、重大な合併症を防ぐことができます。
梅の木眼科クリニックの白内障治療
当院では、白内障の早期発見から治療、術後のフォローまで一貫した医療を提供しています。
年齢や進行度にかかわらず、患者様一人ひとりの目の状態と生活環境を丁寧に把握し、最適な治療方針をご提案しています。
患者様に寄り添った治療方針
当院では、すぐに手術を行うべきかどうかを一方的に決めることはありません。
見えにくさによる生活への影響やご本人のご希望を重視し、点眼治療による経過観察が適している場合もあれば、日常生活に支障が出ている場合には早期の日帰り白内障手術をご提案します。
「まだ様子を見たい」「免許更新までに改善したい」など、患者様の事情を尊重した対応を心がけています。
安全性を重視した手術体制
当院の白内障手術は、局所麻酔による短時間の日帰り手術を基本としています。
手術時間は約10分程度で、創口は縫合せず自然閉鎖するため、術後の回復も比較的早いのが特徴です。多くの方が翌日から日常生活に近い状態でお過ごしいただけます。
また、万が一の合併症にも対応できる硝子体手術設備を整えており、より安全性を重視した手術体制を構築しています。
充実した眼内レンズの選択肢
当院では、保険診療で使用される単焦点眼内レンズに加え、眼鏡への依存を減らしたい方には選定療養による多焦点眼内レンズという選択肢もご用意しています。
患者様のライフスタイルや見え方のご希望を丁寧に伺い、それぞれのレンズのメリット・注意点を十分に説明した上で、納得いただいたレンズを選択していただくことを重視しています。
手術への不安を和らげる配慮
手術に対する不安が強い方には、緊張を和らげる目的で笑気麻酔の導入も行っています。
初めての方や不安が強い方でも、安心して治療を受けていただける環境づくりに努めています。どのような不安や疑問でも、遠慮なくご相談ください。
まとめ
白内障手術で使用する眼内レンズは、半永久的に使用できる設計になっており、基本的に寿命や交換の心配はありません。
ただし、レンズの位置ずれ、度数の不一致、多焦点レンズへの不適応など、例外的に交換が必要になるケースも存在します。
交換が必要な場合は、手術後1〜2ヶ月以内が最も適しており、時間が経過するほど難易度とリスクが上がります。
そのため、術後の見え方に違和感がある場合は、早めに眼科医に相談することが大切です。また、定期検診を欠かさず受けることで、異常の早期発見につながります。
梅の木眼科クリニックでは、白内障による「見えにくさ」を改善することだけでなく、手術後の生活がより快適になることをゴールとしています。
横浜市で白内障治療をご検討の方は、まずはお気軽にご相談ください。患者様の目と日常生活に寄り添った治療を、これからも提供してまいります。
【著者情報】熊谷悠太
日本眼科学会認定眼科専門医
2003年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業、聖マリアンナ医科大学病院眼科学教室入局
2009年 聖マリアンナ医科大学大学院博士課程修了、桜ヶ丘中央病院眼科部長
2016年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院眼科主任医長
2019年 梅の木眼科クリニック開院

