ものもらいは上まぶた・下まぶたで原因が違う?できやすい場所の特徴
2026/03/13
まぶたが赤く腫れて痛みを感じる「ものもらい」は、多くの方が一度は経験する身近な目の病気です。
実は、ものもらいができる場所によって原因や症状に違いがあることをご存知でしょうか?
上まぶたと下まぶた、それぞれにできるものもらいには明確な特徴があります。マイボーム腺の位置や皮脂腺の分布によって、発症しやすい場所や症状の現れ方が異なるのです。
この記事では、眼科専門医の視点から、ものもらいができやすい場所の特徴と、部位別の原因・対処法について詳しく解説します。
ものもらいとは?基本的な知識
ものもらいは、医学的には「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」と呼ばれる目の病気です。地域によって「めばちこ」「めいぼ」「おひめさん」など、さまざまな呼び方があります。
まぶたの縁や内側に細菌が感染し、化膿性の炎症が起こることで発症します。主な原因菌は黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌など、私たちの皮膚に常に存在している常在菌です。
健康な状態では、これらの常在菌は悪影響を及ぼしません。しかし、体の抵抗力が落ちているときや、まぶたが不衛生な状態になると、細菌が増殖して感染を起こしてしまいます。
ものもらいと霰粒腫の違い
ものもらいと似た症状として「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」があります。
霰粒腫は、マイボーム腺の出口が詰まって分泌物がたまり、まぶたの中にしこりができた状態です。細菌感染によるものではありません。
一般的に痛みを伴わないことが特徴ですが、炎症を伴う場合は麦粒腫と似た症状が出ることもあります。
上まぶた・下まぶたの構造の違い
上まぶたと下まぶたでは、解剖学的な構造に違いがあります。 この構造の違いが、ものもらいのできやすさや症状の現れ方に影響を与えているのです。
マイボーム腺の分布
マイボーム腺は、まつげの生え際よりやや内側にある皮脂腺で、涙の蒸発を防ぐ油分を分泌しています。
上まぶたには約30〜40個、下まぶたには約20〜30個のマイボーム腺が存在します。上まぶたの方が数が多く、分泌量も多いため、マイボーム腺に関連する炎症が起こりやすい傾向があります。
皮脂腺と汗腺の位置
まつげの毛穴には、皮脂腺や汗腺が付属しています。
これらの腺に細菌が感染すると、外麦粒腫と呼ばれるタイプのものもらいが発症します。
下まぶたは、まつげの生え際が外部環境に触れやすく、汚れた手で触れる機会も多いため、外麦粒腫ができやすい場所と言えます。
上まぶたにできるものもらいの特徴
上まぶたにできるものもらいには、いくつかの特徴的な症状があります。
内麦粒腫が多い理由
上まぶたには、マイボーム腺が多く分布しているため、内麦粒腫(マイボーム腺に感染が起こるタイプ)ができやすい傾向があります。
内麦粒腫は、まぶたの内側に炎症が起こるため、まぶたをひっくり返すと赤く腫れた部分を確認できます。
症状の現れ方
上まぶたのものもらいは、まばたきをするたびに痛みを感じることが多いです。
腫れが大きくなると、まぶた全体が重く感じられ、視界が狭くなることもあります。炎症が強い場合は、目やにが増えたり、充血が見られたりすることもあります。
化膿の進行
上まぶたの内麦粒腫は、化膿が進むと膿が自然に破れて出ることがあります。
膿が出た後は、症状が回復に向かうことが多いですが、まぶたの内側に傷が残る可能性もあるため、早めの治療が重要です。
下まぶたにできるものもらいの特徴
下まぶたのものもらいは、上まぶたとは異なる特徴を持っています。
外麦粒腫が多い理由
下まぶたは、まつげの毛穴や皮脂腺に細菌が感染する外麦粒腫ができやすい場所です。
日常生活の中で、汚れた手で目をこすったり、前髪が目にかかったりすることで、細菌が付着しやすい環境にあります。
特にコンタクトレンズを使用している方は、レンズの付け外しの際に下まぶたに触れる機会が多く、外麦粒腫のリスクが高まります。
症状の現れ方
下まぶたのものもらいは、まぶたの縁に赤い腫れができることが特徴です。
押すと痛みがあり、まつげの根元に膿が溜まることもあります。上まぶたに比べて、見た目で症状が分かりやすいため、早期に気づきやすい傾向があります。
日常生活への影響
下まぶたのものもらいは、視界を直接遮ることは少ないですが、異物感やゴロゴロした感覚が強く現れることがあります。
アイメイクをする方にとっては、化粧がしづらくなることも悩みの一つです。
ものもらいができやすい場所と原因
ものもらいは、特定の場所にできやすい傾向があります。
まつげの生え際
まつげの毛穴には、皮脂腺や汗腺が付属しており、ここに細菌が感染すると外麦粒腫が発症します。
特に、前髪がまつげに触れる場所や、アイメイクが濃い部分は、細菌が繁殖しやすい環境になります。カットしたばかりの髪の毛先は尖っているため、刺激が強く、ものもらいができやすくなります。
マイボーム腺の開口部
マイボーム腺の開口部が詰まると、分泌物が溜まって細菌が増殖しやすくなります。
過度なアイメイクや不十分なクレンジングは、マイボーム腺の詰まりを引き起こす原因となります。特にアイラインを目の際まで引く習慣がある方は、注意が必要です。
体調不良時の発症
疲労や睡眠不足、ストレスなどで体の免疫力が低下すると、常在菌に対する抵抗力が弱まります。
季節の変わり目や、夏の高温多湿な時期は、細菌が増殖しやすく、ものもらいが発症しやすい時期です。6月から8月にかけては、汗をかきやすくなることで、目に細菌が入りやすくなるため、特に注意が必要です。
部位別の対処法と治療
ものもらいの治療は、基本的には上まぶたも下まぶたも同じですが、部位によって注意すべき点があります。
抗菌薬による治療
ものもらいの治療の基本は、抗菌薬の点眼や眼軟膏の使用です。
症状が軽い場合は、市販の抗菌目薬でも対処できることがあります。しかし、痛みが強い場合や腫れがひどい場合は、眼科を受診して適切な治療を受けることをおすすめします。
症状が重い場合は、抗菌薬の内服が必要になることもあります。
切開による膿の除去
化膿が進んでいる場合は、切開して膿を出す処置を行うことがあります。
上まぶたの内麦粒腫の場合は、まぶたの内側から切開することが多く、傷跡が目立ちにくいです。
下まぶたの外麦粒腫の場合は、まぶたの外側から切開することもありますが、小さな傷で済むことがほとんどです。
温罨法の活用
温めたタオルを目の上に乗せる温罨法は、血行を促進し、マイボーム腺の詰まりを改善する効果があります。
ただし、炎症が強い時期や化膿している場合は、温めることで症状が悪化する可能性があるため、医師の指示に従ってください。
ものもらいを予防するための生活習慣
ものもらいは、日常生活の中で予防することができます。
手洗いの徹底
汚れた手で目をこすらないことが、最も重要な予防法です。
特にコンタクトレンズを使用している方は、レンズの付け外しの前に必ず手を洗うようにしてください。手指に付着している細菌が目に入ることで、ものもらいのリスクが高まります。
目の周りの清潔を保つ
アイメイクをする方は、クレンジングを丁寧に行い、マイボーム腺の詰まりを防ぐことが大切です。
目の際までメイクをすると、マイボーム腺を塞いでしまう原因となるため、アイラインは控えめにすることをおすすめします。洗顔時には、まつげの生え際も優しく洗うように心がけてください。
免疫力を維持する
規則正しい生活と十分な睡眠を心がけ、免疫力を下げないようにすることが重要です。
疲労やストレスが溜まっているときは、体の抵抗力が落ちているため、ものもらいができやすくなります。バランスの取れた食事と適度な運動も、免疫力の維持に役立ちます。
マイボーム腺のケア
マイボーム腺の詰まりを予防するために、定期的なマッサージが効果的です。
洗顔時に、目を閉じた状態でまつげの生え際に指を当て、軽く左右に揺さぶるようにマッサージしてください。ただし、力を入れすぎないように注意し、炎症がある場合は避けてください。
こんな症状があれば早めに受診を
ものもらいは、適切な治療を受けることで早期に改善できます。しかし、以下のような症状がある場合は、早めに眼科を受診することをおすすめします。
まぶた全体が大きく腫れている
強い痛みがある
視界がかすむ、または見えにくい
発熱や全身の倦怠感を伴う
市販薬を使用しても改善しない
繰り返しものもらいができる
特に、まぶた全体に炎症が広がっている場合や、視力に影響が出ている場合は、早急な治療が必要です。
放置すると、感染が拡大して治療が長引く可能性があります。また、繰り返しものもらいができる方は、体質的な要因や生活習慣に問題がある可能性があるため、医師に相談してください。
梅の木眼科クリニックでの治療
梅の木眼科クリニックでは、ものもらいに対して迅速な診断と適切な治療を提供しています。
患者様の症状や生活背景をしっかり伺い、原因に応じた最適な治療方針をご提案します。細菌性の場合は、症状の程度に応じて速やかに抗菌点眼薬による治療を開始します。
また、感染拡大防止のための生活上の注意点も細かくご説明し、患者様が安心して治療に専念できるようサポートいたします。
強い充血・大量の目やに・片目だけの急な症状がある場合は、早めの受診をお願いします。
当院では、患者様の目を守るために、迅速な診断と適切な治療を心がけています。
気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
まとめ
ものもらいは、上まぶたと下まぶたで原因や症状に違いがあります。
上まぶたはマイボーム腺が多く分布しているため内麦粒腫ができやすく、下まぶたはまつげの毛穴や皮脂腺に感染する外麦粒腫ができやすい傾向があります。
日常生活の中で、手洗いの徹底や目の周りの清潔を保つこと、免疫力を維持することが予防につながります。
症状が現れた場合は、早めに適切な治療を受けることで、悪化を防ぎ、周囲への感染も防げます。繰り返しものもらいができる方は、生活習慣の見直しや専門医への相談をおすすめします。
目の健康を守るために、少しでも気になる症状があれば、早めに眼科を受診しましょう。
【著者情報】熊谷悠太
日本眼科学会認定眼科専門医
2003年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業、聖マリアンナ医科大学病院眼科学教室入局
2009年 聖マリアンナ医科大学大学院博士課程修了、桜ヶ丘中央病院眼科部長
2016年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院眼科主任医長
2019年 梅の木眼科クリニック開院


