白内障手術後の注意点〜専門医が教える回復期の過ごし方
2025/08/29
白内障手術後の回復期間とは〜安全に過ごすために知っておくべきこと
白内障手術を受けた後、多くの患者さんが「いつから普通の生活に戻れるのか」「何に気をつければいいのか」と不安を感じています。
手術そのものは短時間で終わりますが、その後の回復期間をどう過ごすかが視力回復の鍵となります。
白内障手術は現在、日本で年間約120万件も行われている非常に一般的な手術です。
手術自体の安全性は高く、多くの場合、日帰りで受けることができます。
しかし、手術後の過ごし方を間違えると、せっかくの手術の効果が十分に得られなかったり、合併症のリスクが高まったりする可能性があります。
特に術後1ヶ月間は、目の状態が安定していく大切な時期です。
私は眼科専門医として15年以上の経験を持ち、数多くの白内障手術を担当してきました。
この記事では、手術後の回復期間に注意すべきポイントを、時期ごとに詳しく解説します。
手術後の過ごし方を正しく理解することで、不安を減らし、スムーズな回復につなげましょう。
手術直後〜3日間の過ごし方と注意点
白内障手術直後は、目の表面に小さな傷があるため、感染症を防ぐことが最も重要です。
この時期は特に注意が必要な期間となります。
手術当日は、眼帯や保護メガネを装着したままにしておきましょう。
これは細菌感染を防ぐだけでなく、紫外線や風などの刺激から目を守る役割もあります。寝るときも外さないようにしてください。
手術直後に特に避けるべきことは以下の通りです。
・目を強く押さえる行為
・洗顔・洗髪・入浴(首から下のシャワーは可能な場合も)
・アルコールの摂取
・激しい運動やスポーツ
・重い物を持ち上げるなどの力仕事
食事制限は基本的にありません。
テレビやスマートフォンの使用は、負担のない範囲であれば問題ありません。ただし、長時間の使用は目の疲れにつながるため、適度に休憩を取りましょう。
術後1〜3日目には、医師の診察を受け、目の状態をチェックします。この時点で、首から下のシャワーが許可されることが多いですが、洗顔や洗髪はまだ控えるよう指示されるでしょう。
あなたは手術を受けたばかりなのに、「もう大丈夫だろう」と思っていませんか?
実は、見た目には問題がなくても、目の中はまだ完全に回復していない状態です。医師の指示を守ることが、合併症を防ぐ最も確実な方法なのです。
術後1週間の生活制限と回復過程
術後1週間は、目の表面についた傷が徐々に治癒していく時期です。
この期間の過ごし方が、その後の回復に大きく影響します。
術後1週間頃には、医師の診察を受け、回復状況に問題がなければ、いくつかの制限が緩和されることが多いです。多くの場合、以下のことが許可されます。
・洗顔・洗髪(シャンプーが目に入らないよう注意)
・アイメイク(アイシャドウ、アイライン、マスカラなど)
・汗をかくような運動
重い物を持ち上げる作業
埃っぽい場所での作業(掃除、庭仕事など)
・車の運転(医師の許可が出るまで)
この時期は、見え方に変化を感じることも多いでしょう。
手術前は水晶体が濁っていたため光が散乱していましたが、手術後は濁りがなくなり、より多くの光が目に入るようになります。
そのため、まぶしさを感じる方が多いです。
私の患者さんの中には、「手術後、色が鮮やかに見えるようになった」と喜ぶ方が多くいます。これは、濁った水晶体を通して見ていた世界から解放された結果です。
一方で、「まぶしくて外出が辛い」という声も聞きます。この場合は、サングラスの着用をお勧めしています。時間の経過とともに、まぶしさは徐々に軽減していくことが多いですが、長期間続く場合は医師に相談しましょう。
点眼薬は医師の指示通りに続けることが非常に重要です。
感染予防や炎症を抑えるための点眼薬を、指示された回数と期間、きちんと使用してください。
術後1ヶ月の注意点と日常生活への復帰
術後1ヶ月が経過すると、多くの方は日常生活のほとんどを普通に送れるようになります。
この時期になると、目の状態も安定してくることが多いでしょう。
術後1ヶ月の診察で問題がなければ、医師の許可のもと、以下のことが可能になることが多いです。
・水泳やプールの使用
・温泉や公衆浴場の利用
ただし、以下のような激しいスポーツや目に衝撃を与える可能性のある活動は、医師と相談の上で再開時期を決めましょう。
・格闘技
・ラグビーやサッカーなどのコンタクトスポーツ
・スキーやスノーボード
・ダイビング
術後1ヶ月頃になると、視力も安定してくることが多いため、新しい眼鏡が必要な場合は、この時期に処方を受けることが一般的です。
白内障手術で挿入する眼内レンズには、主に「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」の2種類があります。
単焦点眼内レンズの場合、一つの距離(遠くか近くか)にしかピントが合わないため、ピントが合わない距離を見るためには眼鏡が必要になります。例えば、遠くが見えるように調整した場合、近くを見るための老眼鏡が必要になります。
一方、多焦点眼内レンズは遠くと近くの両方にピントが合うよう設計されていますが、眩しさや光の周りに輪が見える現象(ハロー・グレア)が生じることがあります。
私の診療では、患者さんのライフスタイルや希望に合わせて、適切な眼内レンズを選択することを大切にしています。どのレンズを選んでも、術後の見え方には個人差があるため、必要に応じて眼鏡で調整することも重要です。
術後に起こりうる違和感や症状とその対処法
白内障手術後には、いくつかの違和感や症状を感じることがあります。
多くは一時的なものですが、中には医師に相談すべき症状もあります。
術後によく見られる症状と対処法を紹介します。
まぶしさ(羞明)
手術後、まぶしく感じることは非常に一般的です。
これは、濁っていた水晶体が透明な眼内レンズに置き換わり、より多くの光が目に入るようになったためです。
多くの場合、時間の経過とともに脳が新しい状況に適応し、まぶしさは徐々に軽減します。それまでの間は、サングラスの着用が効果的です。特に屋外や明るい場所では、紫外線カット機能付きのサングラスを使用しましょう。
青みがかって見える(青視症)
物が青みを帯びて見えることがあります。
これは、加齢によって黄色く濁っていた水晶体が取り除かれ、青色を含む短波長の光が以前より多く目に入るようになったためです。
この症状も通常は一時的で、脳が新しい色覚に慣れるにつれて徐々に正常化していきます。特別な治療は必要ありません。
ドライアイ
手術後に目の乾燥感や異物感を感じることがあります。
これは手術による一時的な涙の質や量の変化が原因です。
人工涙液の点眼が効果的ですが、使用する前に必ず医師に相談してください。
また、長時間のテレビやパソコン、スマートフォンの使用は目の乾燥を悪化させる可能性があるため、適度に休憩を取りましょう。
飛蚊症
目の前に小さな点や糸くずのようなものが浮かんで見える症状です。
これは眼内の硝子体という部分に小さな濁りができることで起こります。白内障がある時には目の中の濁りもマスクされているので、術後光がよく通るようになると飛蚊症が増えたように感じる事が多々あります。
飛蚊症自体は多くの場合無害ですが、突然飛蚊症が増えたり、光が走るように見える(光視症)場合は、網膜剥離等の可能性があるため、すぐに医師に相談してください。
すぐに医師に相談すべき症状
以下の症状が現れた場合は、網膜剥離や眼内炎などの合併症の可能性があるため、すぐに医師に相談してください。
・急激な視力低下
・強い痛み
・極度の充血
・光が走るように見える(光視症)
・視野の一部が欠ける
・カーテンのような影が見える
私の臨床経験では、術後の違和感に不安を感じる患者さんは少なくありません。
しかし、多くの場合、これらの症状は時間とともに改善します。
不安な症状があれば、我慢せずに医師に相談することをお勧めします。
長期的な経過観察と後発白内障について
白内障手術は高い成功率を誇りますが、長期的な視力維持のためには定期的な経過観察が重要です。
特に注意すべきなのが「後発白内障」と呼ばれる状態です。
後発白内障とは
後発白内障は、白内障手術後に水晶体を包んでいた袋(水晶体嚢)の後ろ側が濁ってくる現象です。
手術から数ヶ月〜数年経過してから発症することがあります。
症状としては、手術直後は良好だった視力が徐々に低下したり、まぶしさやかすみを感じたりします。白内障が再発したように感じるかもしれませんが、これは別の現象です。
後発白内障の治療
後発白内障の治療は比較的簡単です。YAGレーザーという特殊なレーザーを使って、濁った後嚢に小さな穴を開ける処置(後嚢切開術)を行います。
この治療は痛みがほとんどなく、数分で終わる外来処置です。入院の必要もなく、治療後すぐに視力が回復することが多いです。
定期検診の重要性
白内障手術後は、後発白内障だけでなく、緑内障や加齢黄斑変性症などの他の眼疾患のリスクもあります。
これらを早期発見するためにも、定期的な眼科検診が重要です。
特に以下のような方は、より注意深い経過観察が必要です。
糖尿病がある方
緑内障の既往歴がある方
強度近視の方
眼の外傷歴がある方
ご家族に眼疾患の既往がある方
「一度手術をしたから大丈夫」と安心せず、定期的に眼科を受診することをお勧めします。
私が日々の診療で強調しているのは、「目の健康は一生もの」ということです。白内障手術は視力回復の素晴らしい手段ですが、その後も継続的なケアが大切です。
白内障手術後の生活の質を高めるためのアドバイス
白内障手術後、多くの患者さんは視力の回復とともに生活の質が向上します。
ここでは、術後の生活をより快適に過ごすためのアドバイスをご紹介します。
適切な眼鏡の選択
白内障手術で挿入した眼内レンズの種類によっては、特定の距離を見るために眼鏡が必要になることがあります。術後1〜2ヶ月程度、視力が安定してから眼鏡を作ることをお勧めします。
単焦点眼内レンズを選択した場合、遠くと近くの両方をはっきり見るためには、状況に応じて眼鏡を使い分ける必要があります。
一方、多焦点眼内レンズの場合でも、より細かい作業には眼鏡が必要になることがあります。
眼鏡を選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。
・紫外線カット機能付きのレンズを選ぶ
・まぶしさが気になる場合は、調光レンズ(光に反応して色が変わるレンズ)を検討する
・老眼鏡が必要な場合は、使用目的に合ったタイプを選ぶ
目の保護と紫外線対策
白内障手術後は、紫外線から目を守ることが特に重要です。
紫外線は加齢黄斑変性症などの眼疾患のリスク因子となる可能性があります。
外出時は、つばの広い帽子やサングラスを着用しましょう。サングラスは、UVカット機能(UV-AとUV-Bの両方をカットするもの)付きのものを選びましょう。
バランスの取れた食生活
目の健康を維持するためには、栄養バランスの取れた食事が重要です。
特に以下の栄養素は目の健康に良いとされています。
・ルテイン・ゼアキサンチン(緑黄色野菜、卵黄など)
・オメガ3脂肪酸(青魚など)
・ビタミンA(レバー、ニンジン、ホウレンソウなど)
・ビタミンC(柑橘類、キウイなど)
・ビタミンE(ナッツ類、種子類など)
・亜鉛(牡蠣、赤身肉など)
サプリメントに頼るよりも、バラエティ豊かな食事から栄養素を摂取することをお勧めします。
デジタル機器の使用と目の疲れ
現代生活では、スマートフォンやパソコン、テレビなどのデジタル機器を使用する機会が増えています。これらの機器から発せられるブルーライトは、目の疲れの原因になることがあります。
デジタル機器を使用する際は、以下の点に注意しましょう。
・20分間画面を見たら、20秒間遠くを見る「20-20ルール」を実践する
・画面の明るさを調整し、部屋の照明と釣り合うようにする
・画面との適切な距離を保つ(腕の長さ程度)
・必要に応じてブルーライトカット機能付きの眼鏡を使用する
・就寝前1時間はデジタル機器の使用を控える
白内障手術によって視力が回復しても、目の使いすぎによる疲労は起こります。
適度な休息を取りながら、デジタル機器を使用しましょう。
私がいつも患者さんに伝えているのは、「手術は終わりではなく、新しい目の生活の始まり」ということです。手術後も目を大切にケアすることで、より快適な視生活を長く維持することができます。
まとめ:安心して過ごすための術後ケアポイント
白内障手術後の回復期間を安全に過ごすためのポイントを、時期別にまとめました。
手術直後〜3日間
・眼帯や保護メガネを指示通りに装着する
・目を強く押さえない
・洗顔、洗髪、入浴を控える
・アルコールを控える
・激しい運動や力仕事を避ける
・点眼薬を指示通りに使用する
術後1週間
・洗顔・洗髪は医師の許可が出てから行う
・アイメイクは控える
・汗をかくような運動は避ける
・車の運転は医師の許可が出るまで控える
・まぶしさが気になる場合はサングラスを着用する
術後1ヶ月
・通常の生活に徐々に戻していく
・視力が安定してきたら、必要に応じて眼鏡を作る
・紫外線対策(サングラス、帽子の着用)を心がける
長期的なケア
・定期的な眼科検診を受ける
・後発白内障の症状(視力低下、まぶしさの再発)に注意する
・バランスの取れた食事で目の健康をサポートする
・デジタル機器の使用時は目の休息を意識する
白内障手術は非常に一般的で安全性の高い手術ですが、術後のケアが回復の質を左右します。
医師の指示に従い、少しずつ日常生活に戻っていくことが大切です。
もし術後に不安な症状があれば、我慢せずに医師に相談してください。
早期発見・早期対応が、合併症予防の鍵となります。
白内障手術によって得られた新しい視界を長く維持するために、目の健康管理を生活の一部として取り入れていただければ幸いです。
より詳しい情報や個別のご相談は、ぜひ当院にお問い合わせください。患者さん一人ひとりに合った適切なアドバイスをご提供いたします。
梅の木眼科クリニックでは、白内障手術から術後のケアまで、患者さんに寄り添った医療を提供しています。安心して手術を受けていただけるよう、スタッフ一同サポートいたします。
【著者情報】
院長:熊谷悠太
2003年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業、聖マリアンナ医科大学病院眼科学教室入局
2009年 聖マリアンナ医科大学大学院博士課程修了、桜ヶ丘中央病院眼科部長
2016年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院眼科主任医長、桜ヶ丘中央病院非常勤
2019年 梅の木眼科クリニック開院
日本眼科学会認定/眼科専門医
身体障害者福祉法指定医(15条指定医)
視覚障害者用補装具適合判定医師研修会/受講修了
日本眼科学会所属