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眼精疲労とは?医学的な観点から見る症状・診断・改善方法

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眼精疲労とは?医学的な観点から見る症状・診断・改善方法

眼精疲労とは?医学的な観点から見る症状・診断・改善方法

2025/10/30

眼精疲労とは?医学的な定義と症状

眼精疲労は、単なる「目の疲れ」とは異なる医学的な状態です。
日本眼科学会の定義によれば、眼精疲労とは「視作業を続けることにより、眼痛・眼のかすみ・まぶしさ・充血などの目の症状や、頭痛・肩こり・吐き気などの全身症状が出現し、休息や睡眠をとっても十分に回復しえない状態」を指します。

私が日々の診療で出会う患者さんの多くは、この「休息しても回復しない」という点を見落としがちです。パソコンやスマートフォンを長時間使用した後の一時的な目の疲れは、休息を取れば回復するものですが、眼精疲労はそうではありません。
眼精疲労の主な症状は、目の症状と全身症状に分けられます。目の症状としては、目の痛み、かすみ目、充血、異物感、まぶしさなどが挙げられます。全身症状としては、頭痛、肩こり、吐き気、倦怠感などが現れることがあります。

これらの症状が単に目を使いすぎた後に現れるだけでなく、十分な休息を取っても改善しない場合は、眼精疲労を疑う必要があります。

私の臨床経験から言えば、多くの患者さんは症状が慢性化してから受診されますが、早期に適切な対処をすることで、症状の悪化を防ぐことができます。

現代社会における眼精疲労の増加要因

近年、眼精疲労に悩む患者さんが急増しています。その背景には、デジタルデバイスの普及と生活様式の変化があります。

特に2025年の現在、リモートワークやオンライン授業の定着により、私たちの目は以前にも増して酷使されています。パソコンやスマートフォンの画面を長時間見続けることで、目のピント調節を行う毛様体筋が緊張状態に置かれ続けるのです。
毛様体筋は、遠くを見るときには緊張が緩み、近くを見るときには緊張します。デジタルデバイスの使用中は常に近くを見続けるため、毛様体筋が長時間緊張した状態になり、疲労が蓄積されていきます。

また、デジタルデバイスからのブルーライトの影響や、画面を見つめることによる瞬きの減少も眼精疲労の一因となっています。通常、人は1分間に15〜20回瞬きをしますが、画面を集中して見ているときは5〜7回程度に減少することが分かっています。
瞬きの減少は涙の蒸発を促進し、ドライアイの原因となります。

さらに、エアコンの風が直接目に当たる環境や、度数の合わないメガネやコンタクトレンズの使用も眼精疲労を悪化させる要因です。これらの環境要因と生活習慣の変化が複合的に作用し、眼精疲労の増加につながっているのです。

あなたは、一日にどれくらいの時間、デジタルデバイスを使用していますか?

眼精疲労の原因と診断方法

眼精疲労の原因は多岐にわたります。私の臨床経験から、主な原因を以下のように分類しています。

目自体の問題

まず考えられるのは、目そのものに問題がある場合です。度の合わない眼鏡やコンタクトレンズの使用は、眼精疲労の最も一般的な原因の一つです。
老視(老眼)の初期段階でも、無理な近業作業を行うことで眼精疲労が生じやすくなります。

また、ドライアイも重要な要因です。涙の量や質に問題があると、目の表面が十分に潤わず、摩擦が増加して不快感や疲労感につながります。特に、長時間のデジタルデバイス使用は瞬きの回数を減少させ、ドライアイを悪化させます。

全身疾患や環境要因

目以外の要因としては、全身疾患や環境的な問題が挙げられます。
自律神経の乱れやストレス、睡眠不足などは眼精疲労を引き起こす要因となります。また、室内の照明が不適切であったり、長時間同じ姿勢でいることによる血行不良も関係しています。

眼精疲労の診断は、まず詳細な問診から始まります。症状の種類や程度、発症のタイミング、生活習慣などを詳しく聞き取ります。その後、視力検査、屈折検査、調節機能検査、眼圧測定、細隙灯顕微鏡検査などの精密検査を行います。

特に重要なのは調節機能検査です。この検査では、目のピント調節能力を評価します。調節力の低下や調節のアンバランスが見られる場合は、眼精疲労の原因となっている可能性があります。
また、涙液検査も重要です。ドライアイの有無を確認するために、涙の量や質、涙膜の安定性などを評価します。必要に応じて、角膜の状態を詳しく観察するための染色検査も行います。

これらの検査結果を総合的に判断し、眼精疲労の原因を特定していきます。原因が特定できれば、それに応じた適切な治療法を選択することができます。

眼精疲労を改善する効果的な治療法

眼精疲労の治療は、原因に応じたアプローチが必要です。私が日々の診療で実践している治療法をご紹介します。

眼鏡・コンタクトレンズの見直し

眼精疲労の多くは、不適切な眼鏡やコンタクトレンズが原因で起こります。正確な視力検査に基づいた適切な度数の眼鏡やコンタクトレンズを使用することで、症状が劇的に改善することがあります。

特に、パソコン作業が多い方には、ブルーライトカットレンズや近用眼鏡(作業用眼鏡)をお勧めしています。これらは目の負担を軽減し、長時間の作業でも快適に過ごせるようサポートします。

薬物療法

眼精疲労の症状を緩和するために、様々な点眼薬を使用します。調節機能の改善を目的とした点眼薬や、目に栄養を与えて疲労を緩和させる点眼薬、ドライアイ改善のための人工涙液などがあります。
症状が重い場合は、内服薬を併用することもあります。ビタミン剤や血行促進剤などが処方されることがありますが、これらは医師の指導のもとで適切に使用することが重要です。

生活習慣の改善

眼精疲労の根本的な改善には、生活習慣の見直しが欠かせません。デジタルデバイスの使用時間を制限し、定期的に休憩を取ることをお勧めしています。

「20-20-20ルール」は特に効果的です。これは、20分ごとに、20フィート(約6メートル)先を20秒間見るというシンプルな方法です。
また、適切な照明環境の整備も重要です。画面と周囲の明るさのコントラストが強すぎると目に負担がかかります。画面の位置も目線よりやや下になるよう調整し、適切な距離(約40〜50cm)を保つことをお勧めします。

睡眠の質を高めることも、眼精疲労の改善に役立ちます。就寝前のデジタルデバイスの使用を控え、規則正しい睡眠習慣を心がけましょう。

自宅でできる眼精疲労改善エクササイズ

眼精疲労を軽減するためには、日常的なケアが重要です。ここでは、自宅で簡単にできる効果的なエクササイズをご紹介します。これらは私が患者さんに実際に指導している方法です。

眼球運動エクササイズ

眼球運動は、目の筋肉をバランスよく動かし、血行を促進する効果があります。以下の手順で行ってみてください。

1. 背筋を伸ばして座り、顔は正面に向けたまま、目だけを動かします。
2. まず、ゆっくりと上を見て5秒間保持し、次に下を見て5秒間保持します。
3. 同様に、右を見て5秒間、左を見て5秒間保持します。
4. 最後に、時計回りと反時計回りに大きく円を描くように目を動かします。各方向に3回ずつ行います。

このエクササイズは1日3回、特にパソコン作業の合間に行うと効果的です。目が疲れていると感じたときにすぐに実践できる簡単な方法です。

ピント調節エクササイズ

ピント調節機能を鍛えるエクササイズも非常に効果的です。長時間近くを見続けることで硬直した毛様体筋をリラックスさせる効果があります。

1. 窓の近くに立ち、指を一本立てて目から約20cmの距離に持ってきます。
2. 最初に指にピントを合わせ、次に窓の外の遠くの物体にピントを切り替えます。
3. このピントの切り替えを10回繰り返します。
4. 少し休憩した後、再度10回行います。

このエクササイズは、近くと遠くを交互に見ることで毛様体筋の緊張をほぐし、調節機能を改善します。1日2〜3回行うことをお勧めします。

温罨法(おんあんぽう)

目の周りの血行を促進し、筋肉の緊張をほぐすために、温罨法も効果的です。蒸しタオルやホットアイマスクを使用して、閉じた目の上から優しく温めます。1回につき5〜10分程度、1日2〜3回行うと良いでしょう。

これらのエクササイズは、継続して行うことが重要です。すぐに効果が現れないこともありますが、根気よく続けることで徐々に眼精疲労の症状が軽減していきます。

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眼精疲労に効果的な栄養素と食事

眼精疲労の改善には、適切な栄養素の摂取も重要です。目の健康をサポートする栄養素と、それらを含む食品についてご紹介します。

ルテインとゼアキサンチン

ルテインとゼアキサンチンは、目の網膜、特に黄斑部に多く存在するカロテノイドです。これらは抗酸化作用を持ち、ブルーライトから目を保護する役割があります。
ほうれん草、ケール、ブロッコリーなどの緑黄色野菜に多く含まれています。また、卵黄やとうもろこしにも含まれています。

これらの食品を積極的に摂取することで、眼精疲労の予防や改善に役立ちます。

オメガ3脂肪酸

オメガ3脂肪酸は、ドライアイの改善に効果があると言われています。涙の質を向上させ、目の表面を潤すのに役立ちます。 青魚(サバ、サンマ、イワシなど)、亜麻仁油、チアシードなどに多く含まれています。
週に2〜3回は青魚を食べるよう心がけると良いでしょう。

ビタミンA

ビタミンAは、目の網膜の機能維持に不可欠な栄養素です。不足すると暗いところで物が見えにくくなる「夜盲症」の原因になります。
レバー、ニンジン、かぼちゃ、サツマイモなどのオレンジ色や黄色の野菜・果物に多く含まれています。
これらの食品をバランスよく摂取することで、目の健康をサポートします。

ビタミンC・E

ビタミンCとEは強力な抗酸化作用を持ち、目の組織を酸化ストレスから守る役割があります。
ビタミンCはレモンやオレンジなどの柑橘類、キウイ、イチゴなどに多く含まれています。ビタミンEはナッツ類、種子、植物油などに含まれています。

これらの栄養素をバランスよく摂取するためには、多様な食品を食べることが大切です。サプリメントも選択肢の一つですが、まずは食事から栄養を摂ることを心がけましょう。必要に応じて、眼科医や栄養士に相談することをお勧めします。

デジタルデバイス使用時の眼精疲労予防策

現代社会では、デジタルデバイスの使用を完全に避けることは難しいでしょう。そこで、デバイスを使用しながらも眼精疲労を予防する方法をご紹介します。

20-20-20ルールの実践

先ほども少し触れましたが、「20-20-20ルール」は眼精疲労予防に非常に効果的です。20分ごとに、20フィート(約6メートル)先を20秒間見るというシンプルな方法です。
このルールを実践するために、タイマーをセットしたり、専用のアプリを使ったりするのも良いでしょう。定期的に目を休ませることで、毛様体筋の緊張を緩和し、眼精疲労を予防できます。

ブルーライト対策

デジタルデバイスから発せられるブルーライトは、眼精疲労の一因となります。ブルーライトカット機能付きの眼鏡やスクリーンフィルターを使用することで、目への負担を軽減できます。
また、多くのデバイスには「ナイトモード」や「ブルーライト軽減モード」が搭載されています。特に夕方以降はこれらの機能を活用し、目に優しい画面設定にすることをお勧めします。

適切な作業環境の整備

作業環境も眼精疲労に大きく影響します。以下のポイントに注意して環境を整えましょう。まず、画面の位置は目線よりやや下(10〜20度下方)に設置することが理想的です。
これにより、自然と目が半分閉じた状態になり、目の表面の乾燥を防ぐことができます。

画面との距離は約40〜50cmを保ち、画面の明るさは周囲の環境に合わせて調整します。部屋が暗すぎると画面とのコントラストが強くなりすぎて目に負担がかかります。

また、エアコンの風が直接目に当たらないよう注意しましょう。エアコンの風は目の表面の涙を蒸発させ、ドライアイを悪化させる原因となります。

意識的な瞬き

デジタルデバイスを使用中は、無意識のうちに瞬きの回数が減少します。意識的に瞬きを増やすことで、目の表面を涙で潤し、ドライアイを予防できます。

「瞬きトレーニング」として、1時間に1回、10回連続で意識的にゆっくりと瞬きをする習慣をつけると良いでしょう。これは簡単ですが、効果的な予防法です。

これらの予防策を日常的に実践することで、デジタルデバイスを使用しながらも眼精疲労のリスクを大幅に減らすことができます。小さな習慣の積み重ねが、目の健康を守る大きな力になります。

眼科受診のタイミングと専門的治療

セルフケアで改善しない眼精疲労は、専門的な治療が必要な場合があります。では、どのようなタイミングで眼科を受診すべきでしょうか。

眼科受診が必要なサイン

以下のような症状がある場合は、眼科受診をお勧めします。

・休息を十分取っても目の疲れや痛みが改善しない
・視力の低下や物がぼやけて見える状態が続く
・目の充血や痛みが強い ・頭痛や吐き気などの全身症状を伴う
・光がまぶしく感じる(羞明)
・目の奥の痛みや圧迫感がある

これらの症状は、単なる眼精疲労だけでなく、他の眼疾患のサインである可能性もあります。早めに専門医の診察を受けることで、適切な治療を開始できます。

眼科での専門的検査

眼科では、眼精疲労の原因を特定するために様々な検査を行います。視力検査や屈折検査はもちろん、調節機能検査、眼圧測定、前眼部検査、眼底検査などを総合的に行います。

特に調節機能検査は重要です。この検査では、目のピント調節能力を詳しく評価します。調節力の低下や調節のアンバランスが見られる場合は、それに応じた治療法を選択します。
また、ドライアイの検査も行います。シルマーテストや涙膜破壊時間(BUT)検査などで涙の量や質を評価し、ドライアイの程度を判定します。

専門的治療法

検査結果に基づいて、様々な治療法が提案されます。基本的な治療としては、適切な眼鏡やコンタクトレンズの処方、点眼薬の使用などがあります。

ドライアイが原因の場合は、人工涙液や涙点プラグなどの治療法があります。涙点プラグは、涙が排出される涙点を一時的に塞ぐことで、目の表面の潤いを保つ方法です。 調節機能の問題がある場合は、調節機能訓練や調節を助ける特殊な眼鏡が処方されることもあります。
また、眼精疲労に伴う頭痛や肩こりなどの全身症状に対しては、必要に応じて他科と連携して治療を行います。 眼精疲労は、放置すると慢性化し、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。

症状が気になる場合は、早めに眼科を受診することをお勧めします。専門的な診断と治療によって、多くの場合、症状の改善が期待できます。

まとめ:眼精疲労との上手な付き合い方

眼精疲労は現代社会において避けて通れない問題ですが、適切な知識と対策があれば、その影響を最小限に抑えることができます。ここまでご紹介した内容を簡潔にまとめてみましょう。

まず、眼精疲労は単なる「目の疲れ」とは異なり、休息を取っても十分に回復しない状態です。デジタルデバイスの普及や生活環境の変化により、眼精疲労に悩む方が増加しています。眼精疲労の原因は多岐にわたりますが、不適切な眼鏡やコンタクトレンズの使用、長時間のデジタルデバイス使用、ドライアイ、全身疾患などが主な要因です。
予防と改善のためには、以下の対策が効果的です。

1. 適切な眼鏡・コンタクトレンズの使用:定期的な視力検査を受け、必要に応じて眼鏡やコンタクトレンズを更新しましょう。
2. デジタルデバイス使用時の工夫:20-20-20ルールの実践、ブルーライト対策、適切な作業環境の整備などが重要です。
3. 目のエクササイズ:眼球運動やピント調節エクササイズを定期的に行うことで、目の筋肉の緊張を緩和できます。
4. 栄養バランスの良い食事:ルテイン、ゼアキサンチン、オメガ3脂肪酸、ビタミンA・C・Eなど、目の健康をサポートする栄養素を積極的に摂取しましょう。
5. 適切な休息:十分な睡眠と定期的な休憩を取ることで、目の疲労回復を促進します。

これらの対策を日常生活に取り入れることで、眼精疲労の予防と改善が期待できます。しかし、セルフケアで改善しない場合や、強い症状がある場合は、早めに眼科を受診することが大切です。
眼精疲労は、適切な対策と専門的なケアによって改善可能な状態です。目は一生使い続ける大切な感覚器官です。日々のケアを怠らず、目の健康を守りましょう。

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【著者情報】熊谷悠太

日本眼科学会認定 眼科専門医
2003年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業、聖マリアンナ医科大学病院眼科学教室入局
2009年 聖マリアンナ医科大学大学院博士課程修了、桜ヶ丘中央病院眼科部長
2016年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院眼科主任医長
2019年 梅の木眼科クリニック開院

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