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冬の暖房で目が乾く原因とは?ドライアイを防ぐ5つの環境改善ポイント

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冬の暖房で目が乾く原因とは?ドライアイを防ぐ5つの環境改善ポイント

冬の暖房で目が乾く原因とは?ドライアイを防ぐ5つの環境改善ポイント

2025/12/17

冬になると目の乾燥が気になる方へ

寒い季節になると、暖房をつける時間が長くなります。

エアコンやヒーターで部屋を暖めると快適ですが、同時に「目が乾く」「ゴロゴロする」「疲れやすい」といった症状を感じる方も多いのではないでしょうか。実は、冬の暖房環境はドライアイを引き起こしやすい条件が揃っているのです。

私は眼科医として、毎年この時期になると「最近、目が乾いて辛い」という訴えで来院される患者様が増えることを実感しています。
暖房による室内の乾燥、長時間のデジタル機器の使用、コンタクトレンズの装用など、現代の生活環境には目にとって負担となる要素が数多く存在します。

今回は、冬の暖房がなぜ目の乾燥を引き起こすのか、その原因とドライアイを防ぐための具体的な環境改善ポイントについて詳しく解説します。

ドライアイとは?涙の異常が引き起こす現代病

ドライアイは「乾性角結膜炎」とも呼ばれる目の疾患です。

涙の分泌量が減少したり、涙の質が低下することで、目の表面を保護する涙の層が不安定になり、涙の安定性が悪化することで、角膜や結膜に傷がつくこともあります。
現在、日本では推定2000万人以上がドライアイに悩まされており、まさに現代病の一つと言えるでしょう。

涙の構造と役割

涙は単なる水分ではありません。
実は、涙は「油層」「水層」「膜型ムチン」という3つの層から構成されており、それぞれが重要な役割を果たしています。最も外側の油層は涙の蒸発を防ぎ、中間の水層は目の表面に栄養を供給し、最も内側の膜型ムチンは涙を目の表面に均一に広げる働きをしています。

このバランスが崩れると、涙が蒸発しやすくなったり、目の表面に均一に広がらなくなったりして、ドライアイの症状が現れるのです。

ドライアイの2つのタイプ

ドライアイは大きく2つのタイプに分類されます。
1つ目は「涙液減少型ドライアイ」で、涙そのものの分泌量が減少するタイプです。加齢や自己免疫疾患などが原因となることが多く、涙腺からの涙の分泌が少なくなります。

2つ目は「蒸発亢進型ドライアイ」で、涙の質が変化して蒸発しやすくなるタイプです。 近年注目されているのが「BUT短縮型ドライアイ」と呼ばれるタイプで、涙の量は十分あるのに、涙の層が不安定ですぐに破壊されてしまうという特徴があります。
パソコン作業が多いオフィスワーカーやコンタクトレンズ装用者に多く見られます。

ドライアイの主な症状

ドライアイの症状は「目が乾く」だけではありません。
目の疲れ、ゴロゴロする異物感、充血、朝の目の開けにくさ、白っぽい目やに、視界のかすみなど、多彩な症状が現れます。

また、最近の研究では、ドライアイによって視力が低下することも明らかになってきました。これらの症状は、失明に繋がることはないものの、生活の質を長期にわたって損なう可能性があります。

冬の暖房が目を乾燥させる3つの理由

では、なぜ冬の暖房環境はドライアイを引き起こしやすいのでしょうか。

理由1:室内の湿度低下による涙の蒸発促進

冬は外気の湿度が低い上に、暖房を使用することでさらに室内の湿度が下がります。

乾燥した空気は、肌がカサカサになるのと同じように、目からも水分を奪っていきます。低湿度の環境では涙の蒸発が亢進し、目の表面を保護する涙の層が薄くなってしまうのです。
特にエアコンやファンヒーターなどの暖房器具を長時間使用すると、室内の湿度は30%以下になることも珍しくありません。

理由2:暖房の風が直接目に当たることによる刺激

エアコンやヒーターから出る温風が直接目に当たると、涙の蒸発がさらに加速します。

冬は外の冷たい風に加えて、室内でも暖房の風にさらされることで、目は常に乾燥のリスクにさらされています。
特にデスクワークをされる方は、エアコンの吹き出し口の真下に座っていることも多く、知らず知らずのうちに目に負担をかけていることがあります。

理由3:まばたきの回数減少との相乗効果

冬場は屋内で過ごす時間が長くなり、パソコンやスマートフォンを見る時間も増えがちです。
デジタル機器を長時間見続けると、まばたきの回数が通常の3分の1程度にまで減少することが知られています。まばたきは涙を目の表面に均一に広げる重要な役割を果たしているため、その回数が減ると目の乾燥がさらに進行します。

暖房による乾燥とまばたき減少の相乗効果で、冬はドライアイのリスクが特に高まるのです。

ドライアイを防ぐ5つの環境改善ポイント

ここからは、冬の暖房環境でもドライアイを防ぐための具体的な対策をご紹介します。

ポイント1:加湿器で室内湿度を50〜60%に保つ

室内の湿度管理は、ドライアイ予防の最も基本的な対策です。

加湿器を使用して、室内の湿度を50〜60%程度に保つことを心がけましょう。加湿器がない場合でも、濡れたタオルを室内に干したり、洗濯物を部屋干しするだけでも一定の効果があります。
また、観葉植物を置くことも、自然な加湿効果が期待できます。湿度計を設置して、こまめに湿度をチェックする習慣をつけることをおすすめします。

ポイント2:暖房の風向きを調整する

エアコンやヒーターの風が直接目に当たらないように、風向きを調整しましょう。

デスクワークをされる方は、座席の位置を変えたり、エアコンの風向きを上向きに設定するなどの工夫が有効です。また、デスクに小型の加湿器を置いたり、パーテーションを設置して直接風が当たらないようにするのも良い方法です。

オフィスでは自分だけで環境を変えることが難しい場合もありますが、できる範囲で対策を講じることが大切です。

ポイント3:意識的にまばたきを増やす

パソコンやスマートフォンを使用する際は、意識的にまばたきの回数を増やしましょう。
1時間に1回は目を休め、遠くを見たり、目を閉じて休息を取ることが重要です。
また、まばたきをする際は、浅いまばたきではなく、しっかりと目を閉じるようなまばたきを心がけると、まぶたから分泌される油分が涙に混ざり、涙の蒸発を防ぐ効果が高まります。

デジタル機器を使用する際は、20分ごとに20秒間、6メートル(20フィート)先を見る「20-20-20ルール」を実践するのもおすすめです。

ポイント4:コンタクトレンズの使用時間を短縮する

コンタクトレンズは涙を吸収し、涙の層を薄くしてしまうため、ドライアイのリスクを高めます。

特に冬場は、自宅ではメガネに切り替えるなど、コンタクトレンズの装用時間を短くすることを心がけましょう。
長時間のコンタクトレンズ装用が避けられない場合は、ドライアイ対策用の目薬を併用したり、含水率の低いレンズや酸素透過性の高いレンズを選ぶことも検討してください。また、使い捨てタイプのレンズを使用し、常に清潔な状態を保つことも大切です。

ポイント5:温めたタオルで目を休ませる

目の周りを温めることで、まぶたの縁にある「マイボーム腺」から分泌される油分の質が改善されます。

濡れたタオルを電子レンジで温めて目の上に乗せたり、市販のホットアイマスクを使用するのも効果的です。温めることで血行が促進され、目の疲れも和らぎます。
1日の終わりに5〜10分程度、目を温める習慣をつけることで、ドライアイの症状が軽減されることがあります。ただし、熱すぎるタオルは逆効果ですので、心地よい温度に調整してください。

日常生活で気をつけたいドライアイ悪化要因

環境改善に加えて、日常生活の中でドライアイを悪化させる要因を減らすことも重要です。

ストレスと自律神経の関係

涙の分泌は自律神経によってコントロールされています。

リラックスしている時に働く副交感神経は涙の分泌を促進しますが、緊張やストレスを感じている時に働く交感神経は涙の分泌を抑制します。
現代人は仕事や人間関係などのストレスにより、交感神経が優位になりがちで、涙の分泌が抑えられている可能性があります。週末の休みにドライアイの症状が軽減するのは、このためです。

ストレスケアとして、十分な睡眠、適度な運動、リラックスできる時間を意識的に作ることが、ドライアイ予防にも繋がります。

夜更かしと睡眠不足の影響

夜間は涙液の分泌が減少するため、夜更かしをすると目が乾燥しやすくなります。

また、睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、ドライアイを促進させる要因となります。質の良い睡眠を十分に取ることは、目の健康を保つ上でも非常に重要です。
就寝前のスマートフォンやパソコンの使用は控え、規則正しい生活リズムを心がけましょう。

運動不足と血流の関係

運動不足は血流を悪化させ、目に必要な酸素や栄養素が十分に届かなくなります。また、長時間座ったままでいると交感神経が優位になり、涙の分泌が減少します。

適度な運動を習慣化することで、血流が改善され、自律神経のバランスも整い、ドライアイの予防に繋がります。
ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。

ドライアイの治療と目薬の選び方

環境改善や生活習慣の見直しを行っても症状が改善しない場合は、眼科を受診しましょう。

眼科での検査と診断

眼科では、涙の量を調べる「シルマー検査」や、涙の層がどれくらいの時間で破壊されるかを調べる「涙液層破壊時間(BUT)検査」などが行われます。

また、専用の染色液を使って角膜や結膜の状態を詳しく観察し、ドライアイのタイプや重症度を診断します。これらの検査結果に基づいて、最適な治療方法が提案されます。

処方される目薬の種類

ドライアイの治療には、涙液のバランスを整える成分が配合された目薬が使用されます。

ヒアルロン酸ナトリウム配合の目薬は涙の保持力を高め、ジクアホソルナトリウムやレバミピドといった新しい作用機序を持つ目薬も開発されています。
症状や原因に応じて、適切な目薬が処方されますので、用法・用量を守って正しく使用することが大切です。

市販の目薬を選ぶポイント

軽度のドライアイであれば、市販の目薬でも対応できます。
涙液のバランスを整える成分(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなど)が配合されているものを選びましょう。

また、防腐剤不使用の使い切りタイプの目薬は、目への刺激が少なくおすすめです。ただし、30〜40分ごとに目薬を使うほど症状が辛い場合は、涙が洗い流されて逆効果になることもあるため、眼科を受診してください。

重症化を防ぐために知っておきたいこと

ドライアイを放置すると、さまざまな合併症のリスクが高まります。

視力低下や角膜障害のリスク

ドライアイが重症化すると、視力低下や角膜上皮剥離(角膜が乾燥してはがれる状態)、角膜感染症などを引き起こす可能性があります。
角膜に傷がつくと、細菌やウイルスに感染しやすくなり、重篤な目の病気に繋がることもあります。

「目が乾く程度」と軽く考えず、症状が続く場合は早めに眼科を受診することが大切です。

生活の質への影響

ドライアイによる慢性的な目の不快感は、集中力の低下や睡眠の質の悪化を引き起こします。

仕事や勉強の効率が下がり、ストレスを感じやすくなるなど、生活の質全体に影響を及ぼす可能性があります。
目の健康を守ることは、心身の健康を守ることにも繋がるのです。

他の病気との関連

ドライアイは、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患や膠原病と関連していることがあります。

口の乾燥や関節痛を伴う場合は、内科での検査も必要です。
また、特定の内服薬(抗不安薬、抗精神病薬など)が涙の分泌を減らすこともあるため、服用している薬がある場合は医師に相談しましょう。

まとめ:冬のドライアイ対策で快適な毎日を

冬の暖房環境は、室内の乾燥、暖房の風、まばたき減少という3つの要因により、ドライアイを引き起こしやすい状態を作り出します。

しかし、加湿器の使用、風向きの調整、意識的なまばたき、コンタクトレンズの使用時間短縮、目を温めるケアという5つの環境改善ポイントを実践することで、ドライアイのリスクを大幅に減らすことができます。また、ストレスケア、十分な睡眠、適度な運動といった生活習慣の見直しも、目の健康を守る上で重要です。

「目が乾く」「疲れる」「ゴロゴロする」といった症状を感じたら、我慢せずに早めの対策を講じましょう。

市販の目薬でも対応できますが、症状が続く場合や悪化する場合は、眼科での診察を受けることをおすすめします。
梅の木眼科クリニックでは、ドライアイの診断から治療まで、患者様一人ひとりの症状に合わせた丁寧な診療を行っています。目の乾燥や不快感でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

見えづらさや目の不調をあきらめず、適切なケアと治療で快適な毎日を取り戻しましょう。

【著者情報】熊谷悠太

日本眼科学会認定 眼科専門医
2003年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業、聖マリアンナ医科大学病院眼科学教室入局
2009年 聖マリアンナ医科大学大学院博士課程修了、桜ヶ丘中央病院眼科部長
2016年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院眼科主任医長
2019年 梅の木眼科クリニック開院

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