多焦点眼内レンズの選択法〜EDOFレンズの選び方〜
2026/10/23
いつもお読みいただきありがとうございます。最近は季節外れの台風や、急な真夏日と思ったら寒さが戻ったりと変な天候が続いています。インフルエンザも流行していますので、皆様体調には十分ご注意ください。
当院は10月より手術待機時間の改善のため、月曜午後を手術日とさせていただきました。外来に受診される皆様にはご迷惑をお掛け致しますが、ご承知おきの程お願いできますと幸いです。
さて、今回のお話は最近引き合いの多い焦点深度拡張型レンズ(EDOFレンズ)の選び方について私見を述べたいと思います。
多焦点眼内レンズの認知が進んだせいか、当院でも多焦点眼内レンズのご相談が増えています。この一因は、EDOFレンズによるものではないかと思います。
EDOFレンズは焦点深度(はっきり見える範囲)を広くすることで、従来の三焦点眼内レンズのデメリットであるコントラスト感度の低下やグレア・ハローを単焦点眼内レンズと同レベルにすることを狙った眼内レンズです。これにより、夜間や運転時の自然な見え方を望まれたり、少し眼にご病気がある方にも適応がしやすくなっています。従来のレンズに比べると40cmくらいの手元は見づらいので、細かい作業の時はメガネを使用するのは問題ないという方にはお勧めしやすくなります。
当院でもEDOFレンズのご相談は最近多く、多焦点眼内レンズのご希望される患者様の7割くらいが選択されているような実感があります。
もちろん、今でも従来の3焦点眼内レンズの出番がないわけではなく、手元が強いものをご希望の場合には有力な選択肢となりますので、生活スタイルに合った眼内レンズをお勧めさせていただいています。
現在日本で使用されているEDOFレンズは二種類あります。ジョンソン&ジョンソン社のテクニスピュアシーとアルコン社のクラレオンvivityというレンズです。このどちらが良いかというご相談をお受けすることが多いので、特徴と選び方の私見をお話ししたいと思います。
TECNIS PureSee
度数ズレに強い万人受けレンズ
まずはテクニス ピュアシーです。
youtubeや、他の先生のブログなどでもおすすめされていることが多いピュアシーですが、何が良いかというとひとえに”度数ズレ”の寛容さが選択しやすさにつながっていると思います。
眼内レンズを選択する際、角膜のカーブや目の長さ(眼軸)などを測定し、理論値で計算して眼内レンズを決定します。最近の機械の進歩、計算式の洗練により術後予測屈折値との誤差はかなり少なくなりました。
しかし、検査の具合や、予定よりも近視が残ってしまったりすることがあります。これが度数ズレになります。
多焦点眼内レンズを選択するときは基本的に遠方(5m)の視力は1.0を目指して挿入することが多いため、予測よりも近視が強くなったり、遠視が出てしまったりすると多焦点眼内レンズの恩恵が受けられなくなることがあります。この度数ズレに強いのがピュアシーです。
焦点深度曲線
ピュアシーは遠視にズレたときの視力が良好
上の図はテクニスシリーズの焦点深度曲線です。
横軸の0が5mの視力となります。縦軸の0が少数視力1.2の視力となります。
下に行けば行くほど視力が出づらくなっていきます。
テクニスピュアシーは裸眼での実用視力が担保できるのは50cmくらいまでと言われており、以前同社で合ったシンフォニーという眼内レンズと同等の見え方をしていますが、それより近方になると視力は出づらくなります。
横軸の0より左側が遠視の部分になりますが、テクニスシリーズの眼内レンズは遠視にズレたときの視力が落ちづらいのが特徴です。通常遠視にズレると遠方の視力が落ちてしまいますが、この設計のおかげで屈折誤差に対して寛容になっています。
これを利用することで、少し近視より(-0.75D~-1.0D)を狙ってターゲットを選ぶことにより、少し手元を強くする選び方ができるのもこの眼内レンズの強みです。
かといって、最初からそれを期待して両眼とも-1.0Dの狙いで入れると遠方の視力が思いの外でないこともあるので、主治医と十分納得された上でそのような選択をすると良いと思います。
MTF曲線比較
出典:https://www.nature.com/articles/s41598-025-07970-y
natureのサイエンスレポートによると、お互いのMTF曲線に大きな違いはありません。MTF(Modulation Transfer Function / 変調伝達関数)曲線とは、カメラのレンズが「被写体のコントラストやディテール(解像度)をどれくらい忠実に再現できるか」をグラフで表した性能表のことです。細かい縦の縞模様をどれだけ解読できるかというものになります。右のグラフになればなるほど細かい縞模様を見たときのコントラスト感度になります。
比較するとどちらも基本的に良好です。ピュアシーの方がやや手元の部分が強くなっていますが、vivityの方が連続的な見え方をするようなカーブです。
この論文にはデフォーカス時の見え方シミュレーションも掲載されていましたが、こちらもピュアシー、vivityとも見た目ではわからない程度の差しかなく、中間までは良好なコントラストが得られていました。
では実際どのように選ぶべきか?
ピュアシーとvivity、データ的にはどちらも同じような性質を持っていることがわかりました。ではどこで選ぶべきでしょうか?
その答えの一つは乱視の程度だと思います。アルコン社のvivity、パンオプティクス(プロも)はT2という−0.75D ~-1.00Dという軽度乱視に対応したトーリックレンズが準備されています。ピュアシーでは軽度乱視の矯正が難しいので、区別する一つの基準となるかと思います。
もう一つは眼内レンズの素材です。ピュアシーはオプティブルーという紫色光までをカットするレンズで、通常の着色レンズと比較して青色光の等価が良好です。蛍光灯のような真っ白な見え方をご希望の方はこちらの方がスッキリするかもしれません。
ただし、片眼EDOF,片眼3焦点のようなmix&matchを検討する場合、オプティブルーの色は他社のレンズの色と違って見える場合があるので神経質な方はやめた方が良いかもしれません。
まとめ
今回ピュアシーとvivityという二種類のEDOFレンズを比較しました。
まとめると以下のようになると思います。
- ピュアシーもvivityも遠方から50cmくらいまでの見え方は同等。それより手前は3焦点が良い
- ピュアシーは予測屈折力の度数ズレに寛容な印象があるため、術者から勧めやすいレンズ
- コントラストは多少レンズの性質はあるもののほぼ同等
- 軽度乱視の矯正はvivityに軍配があがる
- 眼内レンズの着色に差があるので、mix&matchのような入れ方をするとピュアシーの色は他のレンズと違って見えるかもしれない(気にする方は気になるかも)
実際片眼ピュアシー、片眼vivityを入れている方を見ているわけではないのであくまで目安ですし、術者によって考え方が変わる部分ではあります。多焦点眼内レンズにかかわらず、どこにピントを合わせるか、どんな眼内レンズを入れるかはよく相談して決める必要があるので、主治医の先生とよくご相談して納得いくレンズを選ぶことが1番の満足につながると思います。
梅の木眼科クリニックでは、種々の眼内レンズを取り揃えており、患者様一人一人の生活スタイルをよく伺うことで、一番あった眼内レンズをご一緒に決めていきます。
もし多焦点にしようか、単焦点にしようかなどでどうしようかすごく迷ったり、どんな見え方になるのか心配だったりするようでしたら一度ご相談にいらしてください。
白内障手術は基本的には人生で右眼左眼各一度だけの手術です。眼内レンズの選択は十分ご納得した上での手術が受けられることを願っております。
梅の木眼科クリニック 院長 熊谷悠太
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梅の木眼科クリニック
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神奈川県横浜市保土ケ谷区西谷1-25-21 ポンデロッサ西谷1F・2F
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