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白内障で見え方はどう変わる?症状と治療の最新知識

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白内障で見え方はどう変わる?症状と治療の最新知識

白内障で見え方はどう変わる?症状と治療の最新知識

2025/11/17

白内障とは?目の中の水晶体が濁る病気

白内障は、目の中にある水晶体という部分が濁ってしまう病気です。水晶体はカメラのレンズのような役割を果たしており、外からの光を集めてピントを合わせる働きをしています。

年齢を重ねるにつれて水晶体のタンパク質が変性し、透明だった水晶体が白く濁っていきます。
これが白内障の主な原因です。50歳代で約37~54%、60歳代で約66~83%、70歳代で約84~97%、80歳以上ではほぼ100%の方に何らかの白内障の症状が見られるというデータがあります。

白内障になると、視界がかすんだり、ぼやけたりして見えるようになります。
まるで曇りガラスを通して世界を見ているような感覚です。また、光がまぶしく感じたり、色の見え方が変化したりすることもあります。

白内障による見え方の変化とは?

白内障によって見え方はどのように変化するのでしょうか。初期症状から進行した状態まで、段階的に見ていきましょう。

白内障の初期段階では、多くの方が「なんとなく見えにくい」と感じ始めます。
徐々に進行していくため、自分自身では気づきにくいことが特徴です。

視界がかすむ・ぼやける

白内障の最も一般的な症状は、視界がかすんだりぼやけたりすることです。
特に皮質白内障(水晶体の外側から濁るタイプ)でよく見られます。朝起きた時や長時間目を使った後に特に症状が強くなることがあります。

「最近テレビの文字が見づらくなった」「新聞を読むのが億劫になった」という変化に気づいたら、白内障の可能性を疑ってみましょう。

まぶしさを強く感じる

水晶体が濁ると光が散乱しやすくなり、まぶしさを強く感じるようになります。
特に晴れた日の屋外や、夜間の対向車のヘッドライトに対して異常なまぶしさを感じることがあります。

この症状は、後嚢下白内障(水晶体の後ろ側から濁るタイプ)で特に顕著です。日中の運転や屋外活動が困難になることもあるため、生活の質に大きく影響します。

近視の進行(老眼鏡が不要になった)

白内障の一種である核白内障(水晶体の中心部から濁るタイプ)では、水晶体の屈折率が変化して近視が進行することがあります。
長年使っていた眼鏡が合わなくなったり、老眼だった人が突然近くが見えるようになったりする「第二の視力」と呼ばれる現象が起きることもあります。

老眼鏡が不要になったと喜ぶ方もいますが、これは白内障の進行のサインかもしれません。
一時的に近くが見えるようになっても、白内障の進行とともに再び視力は低下していきます。

色の見え方の変化

白内障が進行すると、水晶体が黄色や茶色に変色することがあり、色の見え方に影響します。特に青や紫などの寒色系の色が識別しにくくなり、全体的に黄色や茶色がかって見えるようになります。

この変化は徐々に起こるため自覚しにくいですが、家族や友人と色の話をしていて「そんな色には見えない」と感じることがあれば、白内障の可能性を疑ってみましょう。

白内障の種類と特徴

白内障には主に3つのタイプがあり、それぞれ症状の現れ方に特徴があります。

皮質白内障

皮質白内障は、水晶体の外側(皮質部分)から濁り始めるタイプです。
初期段階では自覚症状がほとんどなく、徐々に視力低下が進行します。視界がかすむ、ぼやけるといった症状が特徴的です。

女性に多く見られ、紫外線の影響を受けやすいとされています。また、糖尿病の方にも発症リスクが高いことがわかっています。

核白内障

核白内障は、水晶体の中心部(核)から濁り始めるタイプです。特徴的な症状として、近視の進行があります。
「最近、近くのものが見えるようになった」という変化があれば、核白内障の可能性があります。

喫煙者に多く見られるという研究結果もあり、生活習慣との関連が指摘されています。

後嚢下白内障

後嚢下白内障は、水晶体の後ろ側(後嚢)の直下から濁り始めるタイプです。他のタイプと比べて進行が早く、強いまぶしさを感じることが特徴です。

ステロイド薬の長期使用や糖尿病、強度の近視などが原因となることがあります。
若い方でも発症することがあり、日常生活への影響が大きいタイプです。

私の臨床経験では、後嚢下白内障の患者さんは「まぶしくて外出が辛い」「夜間の運転が怖い」といった訴えが多く、比較的早期に手術を検討されるケースが多いです。

白内障の診断と検査

白内障の診断は、眼科での詳細な検査によって行われます。どのような検査が行われるのでしょうか。

視力検査

まず基本となるのが視力検査です。視力の低下が見られるかどうかをチェックします。
白内障では、メガネやコンタクトレンズでも視力が十分に矯正できなくなることが特徴です。

遠くの視力だけでなく、近くの視力も確認します。白内障のタイプによって、近くと遠くの見え方に差が出ることがあるためです。

細隙灯顕微鏡検査

白内障の診断に最も重要な検査が、細隙灯顕微鏡検査です。
この検査では、細い光を目に当てながら顕微鏡で水晶体の状態を観察します。

水晶体のどの部分がどの程度濁っているのか、白内障のタイプは何か、進行度はどの程度かなどを詳しく調べることができます。

眼底検査

眼底検査では、目の奥にある網膜や視神経の状態を確認します。
白内障が進行していると眼底が見えにくくなりますが、網膜や視神経に他の病気がないかを確認することが重要です。

白内障の手術を行っても、網膜や視神経に問題があると視力が回復しない場合があるためです。

白内障の治療法

白内障の治療法には、主に点眼薬による治療と手術があります。どのような場合にどの治療法が選ばれるのでしょうか。

点眼薬による治療

白内障の初期段階では、進行を遅らせる目的で点眼薬を使用することがあります。
ただし、点眼薬では一度濁った水晶体を透明に戻すことはできません。あくまで進行を遅らせる効果が期待できるだけです。

日常生活に大きな支障がない軽度の白内障の場合は、定期的な検査を受けながら点眼薬で経過を見ることもあります。

白内障手術

白内障の根本的な治療は手術です。白内障手術は、濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入する手術です。

現在の主流は、超音波で水晶体を砕いて吸引除去する「超音波乳化吸引術」という方法です。
小さな切開創(2~3mm程度)で行うため、術後の回復が早く、縫合が不要な場合も多いです。 手術時間は10~30分程度と短く、多くの場合、局所麻酔で行われます。
日帰り手術も一般的になっており、患者さんの負担は以前と比べて大幅に軽減されています。

私の経験では、「もっと早く手術を受ければよかった」とおっしゃる患者さんが非常に多いです。見え方が改善することで生活の質が大きく向上するからです。

眼内レンズの種類

白内障手術で挿入する眼内レンズには様々な種類があります。主に単焦点レンズと多焦点レンズに分けられます。

単焦点レンズは一般的に保険適用で、遠くか近くのどちらか一方にピントが合うレンズです。
多焦点レンズは遠くと近くの両方が見えるように設計されていますが、保険適用外で自己負担となります。

どのレンズを選ぶかは、患者さんの生活スタイルや希望、眼の状態などを考慮して決めていきます。例えば、読書や手芸が趣味の方は近くが見えるレンズ、運転をよくする方は遠くが見えるレンズを選ぶことが多いです。

白内障手術後の経過と注意点

白内障手術後の回復は比較的早いですが、いくつか注意すべき点があります。

術後の見え方

手術直後は、目の中に入れた眼内レンズに慣れるまで、見え方に違和感を感じることがあります。
特に、長年黄色く濁った水晶体を通して世界を見ていた方は、急に色が鮮やかに見えるようになり、青白く感じることがあります。

また、明るさにも敏感になるため、まぶしさを感じる方も多いです。これらの症状は時間とともに慣れていくことがほとんどです。

後発白内障

白内障手術後、数ヶ月から数年経過すると、約20%の方に「後発白内障」と呼ばれる症状が現れることがあります。
これは、水晶体を入れていた袋(水晶体嚢)が濁ることで起こります。

症状としては、再び視界がかすんだり、まぶしさを感じたりします。しかし、再手術の必要はなく、レーザー治療で簡単に改善できます。
YAGレーザーという特殊なレーザーを使って濁った部分に穴を開ける治療で、短時間で終わり、痛みもほとんどありません。

定期検診の重要性

白内障手術後も定期的な眼科検診が重要です。後発白内障の早期発見だけでなく、緑内障や加齢黄斑変性など、他の眼疾患のチェックも必要だからです。

特に、糖尿病や高血圧などの持病がある方は、網膜の状態を定期的に確認することが大切です。

白内障予防と日常生活での注意点

白内障は加齢に伴い誰にでも起こりうる病気ですが、生活習慣の改善によって進行を遅らせることができる可能性があります。

紫外線対策

紫外線は白内障の発症・進行に関わる重要な因子です。特に皮質白内障との関連が強いとされています。
外出時にはサングラスや帽子を着用し、紫外線から目を守りましょう。

サングラスを選ぶ際は、UVカット機能があるものを選ぶことが大切です。色の濃さと紫外線カット効果は必ずしも比例しないので、購入時に確認しましょう。

バランスの良い食事

抗酸化物質を多く含む食品は、白内障の予防に効果がある可能性が示唆されています。
ビタミンC、ビタミンE、ルテインなどを含む食品を積極的に摂取しましょう。

具体的には、緑黄色野菜、柑橘類、ナッツ類、魚などがおすすめです。バランスの良い食事を心がけることで、目だけでなく全身の健康維持にもつながります。

生活習慣の改善

喫煙は白内障のリスク因子であることが多くの研究で示されています。禁煙することで白内障の発症リスクを下げることができるでしょう。

また、糖尿病も白内障のリスク因子です。糖尿病がある方は、血糖コントロールをしっかり行うことが大切です。

定期的な眼科検診

40歳を過ぎたら、自覚症状がなくても定期的に眼科検診を受けることをおすすめします。早期に白内障を発見することで、適切な時期に治療を始めることができます。
特に、家族に白内障の方がいる場合や、糖尿病などの持病がある方は、より注意が必要です。

まとめ:白内障は怖くない、適切な治療で視力回復

白内障は加齢とともに誰にでも起こりうる病気ですが、現代の医療技術では効果的に治療することができます。初期症状に気づいたら、まずは眼科を受診しましょう。

白内障の手術は、医療技術の進歩により安全性が高まり、患者さんの負担も少なくなっています。手術後は多くの方が視力を回復し、生活の質が向上しています。

日常生活では、紫外線対策やバランスの良い食事、禁煙などで白内障の進行を遅らせることができる可能性があります。また、定期的な眼科検診で早期発見・早期治療を心がけましょう。

白内障は怖い病気ではありません。適切な知識と対応で、いつまでも明るく見える世界を維持していきましょう。

より詳しい情報や個別のご相談は、ぜひ 梅の木眼科クリニック までお問い合わせください。
経験豊富な専門医が、あなたの目の健康をサポートいたします。

【著者情報】熊谷悠太

日本眼科学会認定 眼科専門医
2003年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業、聖マリアンナ医科大学病院眼科学教室入局
2009年 聖マリアンナ医科大学大学院博士課程修了、桜ヶ丘中央病院眼科部長
2016年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院眼科主任医長
2019年 梅の木眼科クリニック開院

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