飛蚊症が急に増えたと感じたら?受診の目安と見逃せない危険なサイン
2026/06/23
「あれ、また増えた気がする…」
ふと青空を見上げたとき、視界の中に黒い点や糸くずのような影がいつもより多く漂っていることに気づく。そんな経験はありませんか?
飛蚊症(ひぶんしょう)は、多くの方が一度は経験する症状です。加齢に伴う自然な変化であることがほとんどですが、急に増えたと感じたときは話が変わります。網膜裂孔や網膜剥離など、放置すれば失明につながりかねない重大な病気のサインである可能性があるからです。
梅の木眼科クリニックでは、「飛蚊症が増えた気がする」と来院される患者さんが少なくありません。この記事では、飛蚊症の基本的な仕組みから、すぐに眼科を受診すべき危険なサインまで、専門医の視点から詳しく解説します。
飛蚊症とは何か―視界に浮かぶ影の正体
飛蚊症は、視界に虫や糸くず・黒い点・透明なアメーバのような影がふわふわと漂って見える症状です。
目を動かすと影も一緒に動き、まばたきをしても消えない。明るい場所や青空・白い壁を背景にしたとき、特にはっきりと見えます。暗い場所では気にならなくなることが多いのも特徴です。
この影の正体は、眼球の内部にある「硝子体(しょうしたい)」という組織の濁りです。
硝子体とは、水晶体の後方から網膜にかけて眼球の大部分を占める、卵の白身のような透明でゼリー状の組織です。本来は透明ですが、何らかの原因で濁りが生じると、その影が網膜に映り込み、視界に浮かぶ「飛蚊症」として自覚されます。
影の形や大きさ・数は人によってさまざまで、1個のこともあれば、多数が同時に見えることもあります。色も黒いものから半透明のものまで幅があります。
飛蚊症はあらゆる年齢層に起こりますが、高齢者ほど、また近視が強い方ほど多く見られる傾向があります。
生理的飛蚊症と病的飛蚊症―2つの原因を正しく理解する
飛蚊症の原因は、大きく「生理的なもの」と「病的なもの」の2種類に分けられます。 この2つを自分で見分けることは非常に難しく、だからこそ眼科での検査が重要になります。
生理的飛蚊症―多くの方に起こる自然な変化
飛蚊症の大部分は、加齢による硝子体の変化が原因です。
40代頃から、透明なゼリー状だった硝子体は少しずつ液状化し始めます。やがて硝子体全体が収縮し、網膜から離れていく「後部硝子体剥離(こうぶしょうしたいはくり)」が起こります。
後部硝子体剥離とは、硝子体が網膜から剥がれていく現象です。このとき生じるコラーゲン線維の塊や濁りが、黒い点や糸くずとして見えるのが生理的飛蚊症です。
後部硝子体剥離は60代前半に好発しますが、中等度以上の近視がある方では10年ほど早く起こることが知られています。
また、白内障手術を受けた方では1年以内に出現することもあります。
生理的飛蚊症は、多くの場合は経過観察で問題ありません。ただし、後部硝子体剥離が引き金となって重大な病気が起こることもあるため、初めて飛蚊症を自覚したときは必ず眼科で検査を受けることをおすすめします。
病的飛蚊症―見逃してはいけない危険な原因
一方、以下のような目の病気が原因となっている飛蚊症もあります。
網膜裂孔(もうまくれっこう)…網膜に穴が開いた状態。後部硝子体剥離の6〜19%に起こるとされています
網膜剥離(もうまくはくり)…網膜が剥がれた状態。進行すると視野欠損や失明につながります
硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)…糖尿病・高血圧・外傷などが原因で硝子体内に出血が起こった状態
ぶどう膜炎…細菌・ウイルス・アレルギーなどによる炎症で、硝子体にも濁りが生じます
これらの病的飛蚊症は、早期治療が視力を守る最大のポイントです。放置すれば取り返しのつかない視力障害につながる可能性があります。
出典 公益社団法人 日本眼科医会「黒いものが飛ぶ 飛蚊症」 より作成
飛蚊症が急に増えたとき―これが最大の危険サイン
「急に増えた」という変化を、絶対に見逃さないでください。
これまで少しだけ見えていた飛蚊症が、ある日突然、明らかに数が増えたと感じた場合は、網膜裂孔や網膜剥離などの重大な病気が起きているサインである可能性があります。
以下の症状が現れたときは、できるだけ早く眼科を受診してください。
飛蚊症の数が急に増えた
ピカピカ・チカチカと光が見える「光視症(こうししょう)」が出てきた
視界の一部が欠ける、または黒い影が広がってきた
見え方が急に変わった・視力が急に落ちた
特に「光視症」は要注意です。これは網膜が引っ張られたり刺激されたりしているサインで、網膜裂孔・網膜剥離の初期症状として現れることがあります。
網膜剥離は「時間との勝負」
網膜剥離は、失明につながる重篤な病気です。
しかし、早期に治療することで、深刻な視力障害を予防できる可能性が高くなります。特に、視野の中心部(黄斑)に剥離が及ぶ前に治療を行うことが、視力を守るうえで非常に重要です。
「少し様子を見てから…」という判断が、取り返しのつかない結果を招くことがあります。急な変化を感じたら、翌日以内の受診を強くおすすめします。
「飛蚊症が急に増えた日は、その日のうちか翌日には眼科へ。時間が視力を守ります。」
近視が強い方は特に注意
強い近視がある方は、眼球の長さが普通より長いため、網膜が薄く変性した部分ができやすくなります。そこから網膜裂孔が生じることもあるため、近視の方が飛蚊症を自覚した場合は、特に早めの眼底検査をおすすめします。
また、後部硝子体剥離も10年ほど早く起こりやすいため、30〜40代であっても油断は禁物です。
出典 公益社団法人 日本眼科医会「飛蚊症と網膜剥離 なぜ?どうするの」 より作成
眼科ではどんな検査をするのか―受診の流れと注意点
飛蚊症で眼科を受診すると、まず問診で症状の変化や発症時期・既往歴などを確認します。
その後、飛蚊症の原因を調べるために「眼底検査」を行います。眼底検査では、瞳を開く目薬(散瞳薬)を点眼し、眼底(網膜・硝子体)の状態を詳しく観察します。
散瞳薬を使用した後は、数時間〜半日程度、見え方がぼやけたり光がまぶしく感じたりします。
そのため、お車での来院は控えていただくようお願いしています。公共交通機関や送迎をご利用ください。
検査でわかること・治療の方向性
眼底検査の結果、生理的飛蚊症と確認できた場合は、基本的に経過観察となります。ただし、定期的な検査で変化がないかを確認することが大切です。
一方、網膜裂孔が見つかった場合は、レーザー治療(網膜光凝固術)が必要になります。レーザーで裂孔の周囲を焼き固め、網膜剥離への進行を防ぎます。
ただし、このレーザー治療で飛蚊症そのものが消えるわけではありません。
網膜剥離を生じた場合は、レーザーでは対応できないため、手術が必要となります。治療が必要と判断した場合は、速やかに連携病院へご紹介します。
硝子体出血やぶどう膜炎が原因の場合は、それぞれの原疾患に対する治療を行います。糖尿病や高血圧が背景にある場合は、全身疾患の管理も重要です。
飛蚊症のレーザー治療について
近年、生理的飛蚊症に対するレーザー治療(レーザービトレオライシス)も一部で行われています。
特に後部硝子体剥離によるワイスリングと呼ばれるタイプには、レーザーによる症状改善が可能な場合があります。
ただし、すべての飛蚊症がレーザー治療の対象となるわけではなく、浮遊物と網膜またはレンズとの距離が短い場合や、緑内障・網膜の病気・ぶどう膜炎がある方は対象外となります。
また、レーザー治療は飛蚊症を完全に消す治療ではなく、見えやすく改善する治療です。詳細は担当医にご相談ください。
日常生活で気をつけたいこと―飛蚊症と上手に付き合うために
生理的飛蚊症と診断された場合、多くの方は「慣れていく」ことが一般的です。
最初はうっとうしく感じても、時間の経過とともに気にならなくなることが多いとされています。
こんなとき、もう一度受診を
一度「生理的飛蚊症」と診断された方でも、以下の変化があれば再受診が必要です。
飛蚊症の数や大きさが明らかに増えた・変わった
光視症(ピカピカ・チカチカする光)が新たに出てきた
視野の一部が欠けてきた、または暗い影が広がってきた
視力が急に落ちた
「前に検査したから大丈夫」と思わず、変化を感じたらすぐにご相談ください。
定期検診のすすめ
飛蚊症は、自覚症状が少なく、視力が低下したり痛んだりしないことが多い症状です。そのため、「たいしたことはない」と放置してしまいがちです。
しかし、その油断が網膜剥離や眼底出血などの重大な病気を見逃す原因になることがあります。
特に40代以降の方、強い近視がある方、糖尿病・高血圧をお持ちの方は、症状がなくても定期的な眼底検査をおすすめします。
目の健康は、日々の小さな変化に気づくことから守られます。
「なんとなく気になる」という感覚を大切にしてください。
まとめ―飛蚊症が急に増えたら、迷わず眼科へ
飛蚊症は、多くの場合は加齢による自然な変化(生理的飛蚊症)で、経過観察で問題ありません。
しかし、急に増えた・光が見える・視野が欠けるといった変化は、網膜裂孔や網膜剥離などの重大な病気のサインである可能性があります。これらは早期発見・早期治療で視力を守ることができる病気です。
「様子を見ようかな」と思ったとき、その判断が視力を左右することがあります。
梅の木眼科クリニックでは、飛蚊症の原因を丁寧に調べ、生理的なものか病的なものかを正確に診断します。気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
飛蚊症が急に増えた・光が見える・視野が欠けるなどの症状を感じたら、早めの受診をおすすめします。
目の異変を感じたら、まずは眼科専門医にご相談ください。
【著者情報】熊谷悠太
日本眼科学会認定眼科専門医
2003年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業、聖マリアンナ医科大学病院眼科学教室入局
2009年 聖マリアンナ医科大学大学院博士課程修了、桜ヶ丘中央病院眼科部長
2016年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院眼科主任医長
2019年 梅の木眼科クリニック開院

