緑内障は自覚症状がないのはなぜ?気づきにくい理由と早期発見のポイント
2026/06/24
「視力は変わっていないのに、緑内障と言われた」
そんな経験をされた患者さんが、梅の木眼科クリニックにも多くいらっしゃいます。
健診でたまたま引っかかり、初めて緑内障を知る方がほとんどです。
緑内障は、視野が欠けていても自分では気づけない病気です。
視力は保たれ、両目が互いに補い合い、さらに脳が視野欠損を補正してしまうため、異常を感じにくいのです。
40歳以上の約20人に1人が緑内障であることが疫学調査で分かっています。
それほど身近な病気でありながら、自覚症状がないために発見が遅れてしまうことが多いのが現状です。
この記事では、緑内障がなぜ気づきにくいのか、その理由を丁寧に解説します。
そして、早期発見のために何をすべきかをお伝えします。
緑内障とはどんな病気か
緑内障は、視神経が徐々に障害され、視野(見える範囲)が狭くなっていく病気です。
眼圧の上昇が原因の一つとされていますが、眼圧が正常範囲内でも緑内障になる「正常眼圧緑内障」もあります。
実は日本人の緑内障の約6割が正常眼圧緑内障であることが分かっており、欧米と比べて日本人に多い傾向があります。
一度障害された視神経は、現在の医療では元に戻すことができません。
だからこそ、早期発見・早期治療が何より重要なのです。
緑内障は中途失明の原因疾患として第1位(25.5%)を占めており、決して軽視できない病気です。
第2位は糖尿病網膜症(21%)、第3位は網膜色素変性(8.8%)と続きます。
出典 公益社団法人 日本眼科医会「緑内障ってどんな病気?」 より作成
緑内障で自覚症状が出にくい3つの理由
「なぜ視野が欠けているのに気づかないのか?」
これは多くの患者さんが疑問に思われることです。
実は、気づきにくくなる理由が3つあります。
理由① 視力は末期まで保たれる
緑内障で侵されるのは「視野」であり、「視力」ではありません。
視力とは「見るための目のチカラ」、視野とは「視界の広がり」のことです。
同じモノサシでは測れないため、視力検査では緑内障を発見することができません。
目の中心部分(黄斑部)は緑内障の末期になるまで無事であることが多く、裸眼視力や矯正視力が悪くなることは末期まで起こりにくいのです。
そのため「メガネをかければよく見える」という状態が続き、異常に気づかないまま進行してしまいます。
理由② 両目が互いに補い合う
日常生活では、私たちは両目を使って見ています。
片方の目に視野欠損があっても、もう片方の目がその部分を補ってしまうため、異常に気づかないことがほとんどです。
緑内障の中期以降になっても、片目の視野が保たれていれば、視野が狭いことに気づくのが遅くなります。
これは緑内障の恐ろしさの一つです。
片目ずつ隠して視野を確認することが、セルフチェックとして有効な理由はここにあります。
理由③ 脳が視野欠損を補正してしまう
さらに厄介なのが、脳の働きです。
視野に欠けた部分があっても、脳が「あたかもそこに何かがあるように」補正してしまいます。視野欠損はぼやけたり霧がかかったように感じるだけで、暗くはなりません。
そのため、欠けた部分があることに本人が気づきにくくなるのです。
この3つの理由が重なることで、緑内障は自覚症状がないまま静かに進行していきます。
出典 公益社団法人 日本眼科医会「緑内障ってどんな病気?」 より作成
視野障害はどのように進行するのか
緑内障の視野障害は、段階的に進行します。
各ステージでどのような状態になるのかを知っておくことが大切です。
初期:中心からやや離れた場所に暗点が生じる
初期の段階では、目の中心からやや離れたところに「暗点(見えない点)」ができます。
この段階では、ほぼ全員が自分自身で異常に気づくことはありません。
完全に見えないわけではなく、何となく見えづらい・かすむ・ぼーっとするといった程度の感覚です。
しかも暗くはならないため、異常とは感じにくいのです。
中期:暗点が拡大し視野欠損が広がる
中期になると、暗点が拡大し、視野の欠損範囲が広がり始めます。
しかしこの段階でも、もう片方の目によって補われるため、異常に気づかないことが多いのです。
特に上方の視野が欠けた場合、高齢の方は上まぶたが下がってくることもあり、さらに気づきにくくなります。
末期:視野が著しく狭くなり日常生活に支障が出る
末期になると、視野はさらに狭くなり、視力も悪化します。
日常生活にも支障をきたすようになり、さらに放置すると失明に至ります。
この段階になって初めて「おかしい」と気づく方も少なくありません。
緑内障患者さんの約9割が、自身が緑内障であることに気づいていないとも言われています。
だからこそ、症状が出る前の定期検査が不可欠なのです。
緑内障を早期発見するためのポイント
早期発見には、定期的な眼科検査が最も重要です。
緑内障は初期の段階で治療を始めることができれば、視野を保つことができます。
特に40歳を過ぎたら、症状がなくても年に1度は眼科を受診することをお勧めします。
眼科で受けるべき検査
緑内障の確定診断には、複数の検査が必要です。
梅の木眼科クリニックでは、以下の検査を実施しています。
眼圧検査…目の表面に測定器具を当てる方法や、空気を当てる方法で眼圧を測定します。緑内障発見のための重要な検査です。
眼底検査…視神経の状態を確認します。視神経が障害されている場合、陥凹(へこみ)の形が変形・拡大しています。
視野検査…視野の欠損の有無や大きさを判定し、緑内障の進行具合を確認します。
眼底3次元画像解析(OCT)…視神経の微細な変化を早期に捉えることができる精密検査です。
これらの検査を組み合わせることで、初期の緑内障でも発見できる可能性が高まります。
自宅でできるセルフチェックの活用
眼科受診の前に、自宅でのセルフチェックを試みることも一つの方法です。
片目を手で隠し、もう片方の目だけで視野を確認する方法が基本です。
視野の一部がぼやける・欠けているように感じる場合は、速やかに眼科を受診してください。
ただし、セルフチェックはあくまでも目安です。
異常が見つからなくても、定期的な眼科受診が大切です。
緑内障の治療について知っておきたいこと
緑内障の治療で唯一エビデンス(データ上の根拠)があるのは、眼圧を下げることです。
一度欠損した視野を元に戻す治療は、現在の医療では困難とされています。
そのため、治療の目標は「進行を食い止めること」になります。
点眼薬による治療
緑内障治療の主体は、点眼薬です。
点眼薬は大きく分けて、房水の産生を抑制するもの(β遮断薬・炭酸脱水酵素阻害薬・α2刺激薬など)と、排出を促進するもの(プロスタグランジン関連薬・ROCK阻害薬など)があります。
通常は1種類の点眼薬から治療を始め、眼圧の下がり方と視野障害の進行を見ながら調整していきます。
場合によっては3〜4種類の点眼薬を使用することもあります。
SLTレーザー治療(選択的レーザー線維柱帯形成術)
点眼薬で十分な効果が得られない場合や、副作用・アレルギーで点眼を継続できない場合に有効な選択肢です。
低出力のレーザーを線維柱帯(房水を排出する際のフィルター部分)に照射し、細胞を活性化して房水の排出を促進します。
周辺の組織へのダメージがほとんどなく、繰り返しの施術も可能です。
痛みも少なく、日帰りで実施できます。
施術時間は5分程度で、術後のケアは消炎の点眼のみです。治療費用は3割負担の方で約30,000円です。
緑内障の点眼薬は長期間使い続ける必要があることを考えると、長期的に見て経済的なメリットもあり得ると考えます。
小切開緑内障手術(MIGS)
点眼治療やレーザー治療でも目標の眼圧が得られない場合、手術を検討します。
近年、小切開緑内障手術(MIGS)が主流となってきています。
梅の木眼科クリニックでは、白内障手術と併用してMIGSを実施しており、良好な眼圧下降を認めています。
手術のタイミングを逃さないためにも、定期検査が何より重要です。
患者さん一人ひとりに合った治療方針
どの治療方法が正しいかは、患者さんによって千差万別です。
梅の木眼科クリニックでは、患者さんお一人おひとりに合った治療法を、患者さん・ご家族様とともにオーダーメイドのようにご相談しながら決定していく方針をとっています。
緑内障でお困りの方、ご不安に思われている方は、ぜひご相談ください。
40歳を過ぎたら定期検査を習慣に
緑内障は、40歳以上の約20人に1人が罹患する疾患です。
これだけ身近な病気でありながら、自覚症状がほとんどないため、発見が遅れてしまうことが多いのが現実です。
最近は、健診やたまたま別の症状で眼科を受診したことで発見されるケースが増えています。
40歳を過ぎたら、症状がなくても年に1度は眼科を受診することをお勧めします。
早期発見・早期治療が、視野を守る唯一の方法です。
緑内障は一生涯付き合っていく病気です。
しかし、適切な治療と定期検査を続けることで、視野を長く保つことができます。
まとめ
緑内障が自覚症状のないまま進行する理由は、主に3つです。
視力は末期まで保たれるため、視力検査では発見できない
両目が互いに視野欠損を補い合う
脳が視野欠損を補正してしまう
これらの理由が重なり、緑内障は気づかないうちに進行してしまいます。
一度欠けた視野は元に戻せないからこそ、早期発見が最大の防御策です。
梅の木眼科クリニックでは、眼圧検査・眼底検査・視野検査・OCT(眼底3次元画像解析)による精密な検査を実施しています。
点眼治療からSLTレーザー治療、MIGS(小切開緑内障手術)まで、患者さん一人ひとりに合った治療を提供しています。
「最近、健診で眼圧が高いと言われた」「視野が気になる」「緑内障かもしれないと不安」…そのような方は、ぜひ一度ご相談ください。
早めの受診が、あなたの大切な視野を守ることにつながります。
【著者情報】熊谷悠太
日本眼科学会認定眼科専門医
2003年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業、聖マリアンナ医科大学病院眼科学教室入局
2009年 聖マリアンナ医科大学大学院博士課程修了、桜ヶ丘中央病院眼科部長
2016年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院眼科主任医長
2019年 梅の木眼科クリニック開院

