白内障で夜だけ見えにくいのはなぜ?運転時に気づきやすい見え方の変化と注意点
2026/05/14
夜間の運転中、対向車のライトが異常にまぶしく感じたり、トンネルを出た瞬間に視界が暗く感じたりすることはありませんか?
実はこれらの症状、白内障の典型的なサインかもしれません。
白内障は加齢とともに誰にでも起こりうる目の病気です。60歳で70%、70歳で80%、80歳を過ぎると程度は様々ですが100%の方に白内障が出現します。特に夜間の見え方に影響が出やすく、運転時に初めて異変に気づく方も少なくありません。
この記事では、白内障が夜間の視界に与える影響と、運転時に注意すべきポイントについて詳しく解説します。
白内障で夜間の見え方が変わる理由
白内障とは、目の中の「水晶体」と呼ばれる部分が濁ってしまう病気です。
水晶体はカメラのレンズのような役割を果たしており、外からの光を集めてピントを合わせる働きをしています。本来は透明な組織ですが、加齢やその他の要因により白く濁ってしまうと、さまざまな視覚症状が現れます。
光の散乱が起こるメカニズム
水晶体が濁ると、光がまっすぐ届かなくなります。
その結果、光の散乱が生じ、特に夜間や暗い場所で症状が顕著になるのです。
晴れの日や屋外、逆光の状態などでもまぶしいと感じるようになりますが、夜間は対向車のヘッドライトや街灯の光が散乱しやすく、視界全体がギラついたり、まぶしく感じたりします。
夜間視力の低下と暗順応の遅れ
人間の目には、明るい場所で働く「錐体細胞」と、暗い場所で働く「桿体細胞」という2種類の視細胞があります。
夜間視力では桿体細胞が重要な役割を果たしていますが、白内障により水晶体が濁ると、少ない光でも物を見る力が低下します。さらに、明るい場所から暗い場所に移動した際に物が見えるようになるまでの「暗順応」にも時間がかかるようになります。
これらの要因が重なることで、夜間の運転時に特に見えにくさを感じるようになるのです。
運転時に気づきやすい白内障の症状
白内障は進行が緩やかなため、日常生活ではなかなか気づきにくいことがあります。しかし、運転中は視覚情報が特に重要になるため、症状に気づきやすくなります。
以下のような症状がある場合は、白内障の可能性を疑ってみてください。
対向車のライトが異常にまぶしい
夜間運転中、対向車のヘッドライトが以前よりも強くまぶしく感じることはありませんか?
白内障で水晶体が濁ると、光が散乱しやすくなり、本来なら一点に集まる光が乱れて網膜に届きます。その結果、視界全体がギラついたり、光の周りに輪がかかって見える「ハロー現象」が起こったりします。
このような症状は白内障特有のもので、夜間運転の安全性を大きく低下させる要因となります。
トンネル出口で視界が暗く感じる
夜間のトンネルはある程度の明るさがありますが、トンネルの外には街灯のない暗い場所もあります。
白内障があると、明るい場所から暗い場所への移動時に暗順応が遅れ、見えるようになるまでに時間がかかってしまいます。この間、歩行者や障害物の発見が遅れる可能性があり、事故のリスクが高まります。
街灯や照明がにじんで見える
夜間に片目で月を見てみると、二重、三重に見えることがあります。
これは水晶体が不均一に濁っているために起こる症状で、白内障で多くみられるものです。街灯や照明も同様ににじんで見えたり、くすんで見えたりすることがあります。
両目で見てもものが重なって見える場合には、そのほかの目の病気が考えられますので、早めに眼科を受診することをおすすめします。
道路照明の変化に対応しにくい
明るい幹線道路や商店が立ち並ぶ商業地沿いの道路から、街灯の暗い生活道路へ入ったときなどに、歩行者や自転車を見つけるのが難しくなります。
白内障による夜間視力の低下は、このような照明環境の変化に対応する能力を低下させます。
特に高齢になるほど瞳孔の開け閉めを行う筋肉の動きが変化し、暗い場所でも光が入りにくくなることがあります。
白内障による夜間視力低下の危険性
白内障による夜間視力の低下は、運転の安全性に直結する重要な問題です。
視界が悪化すると、歩行者や標識の発見が遅れ、ブレーキ操作が遅れるリスクが高まります。
実際に「夜の運転が怖い」と感じて受診される患者様も多く、検査をすると中等度以上の白内障が見つかるケースは少なくありません。
事故リスクの増加
日本では高齢ドライバーによる交通事故が社会問題化しています。
その一因として白内障による視力障害が指摘されています。夜間や雨天時に視界が悪化すると、歩行者や標識の発見が遅れ、ブレーキ操作が遅れるリスクが高まります。
人は私生活における情報の90%を目から得ていると言われており、白内障により脳に伝わる画像が鮮明でなくなると、外界から得られるべき情報が妨げられます。
免許更新への影響
免許更新時に70歳以上の方が受講する高齢者講習では、夜間視力検査が行われます。
この検査では、光を30秒間直視した後の視力回復時間や、対向車のライトを模した光を浴びた状態での視力が測ることがあります。白内障が進行していると、これらの検査で十分な結果が得られず、免許更新に影響が出る可能性があります。
視力検査の結果により、自動車免許の更新が行えなかったというケースも見られます。
白内障の診断と治療
夜間の見えにくさを感じたら、早めに眼科を受診することが大切です。
白内障の診断は、視力検査や細隙灯顕微鏡検査(水晶体の濁りを調べる検査)などで行われます。
梅の木眼科クリニックでは最新の眼内レンズ計測機器やOCT(眼底三次元画像解析)も導入しており、手術が必要な場合も精密な検査結果に基づいて最適なプランを提案できます。
点眼薬による進行予防
白内障の初期であれば、進行をある程度遅らせるための点眼薬を用いる場合もあります。
ただし、点眼薬は白内障の症状を改善したり、視力を回復させることはできません。あくまで進行を遅らせるためのものであり、視力に影響が出ている場合や生活に支障がある場合は手術が必要となります。
白内障手術の選択肢
視力に影響が出ている場合や生活に支障がある場合は、「白内障手術」が唯一の根本治療です。
手術では濁った水晶体を超音波で砕いて取り除き、人工の水晶体である眼内レンズを挿入します。
手術時間は10分程度と短く、点眼麻酔による局所麻酔のためほとんど痛みはありません。創口は縫合することなく自己閉鎖し、患者様の不安・負担をできる限り軽減する手術を心がけています。
眼内レンズの種類
眼内レンズには「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」の2種類があります。
単焦点眼内レンズはピントの合う点が1点のみのため、遠方を重視すると近方は老眼鏡が必要になり、逆に近方を重視すると遠くを見るときには近視用のメガネが必要になります。
多焦点眼内レンズはこの欠点を補い、できるだけメガネを使いたくないというニーズにお応えするために登場したものです。
梅の木眼科クリニックでは、患者様の目の状態とライフスタイル、ご希望の見え方に応じて十分説明した上で使用するレンズを決定しています。
手術後の生活と運転再開の目安
白内障手術を受けた後、多くの方が視界のかすみやまぶしさの改善を実感されます。
「景色の色が鮮やかに見えるようになった」「標識や信号がはっきり見える」といった声が多く聞かれ、運転の安全性はもちろん、日常生活全体の快適さも大きく向上します。
運転再開のタイミング
一般的には、手術翌日から数日で視力が改善し始める方が多いです。
ただし、見え方が安定するまでには個人差があります。眼科医が行う翌日の診察や1週間後の検査で視力が十分に回復していれば、運転再開が可能となるケースが多いです。
手術した目の回復具合や反対側の目の状態によっても異なるため、必ず医師の指示に従うことが重要です。
術後の注意点
手術後1週間は強く眼をこすることや圧迫を避けてください。
処方された点眼薬を指示通りに使用し、感染予防のためプールや温泉はしばらく(1カ月程度)控えることが必要です。
視力が安定するまでは夜間の運転を避け、手術翌日からほぼ通常の日常生活が可能ですが、無理をせず徐々に活動範囲を広げていくことをおすすめします。
生活の質の向上
眼内レンズの種類によっては老眼鏡が不要になる場合もあり、読書やスマートフォン操作なども楽に行えるようになります。
生活の質(QOL)が改善されることは、白内障手術の大きなメリットです。年齢によって白内障が出てくるのは仕方ありませんが、白内障で見づらいからといってやりたいことを諦める必要はありません。
まとめ:早期発見と適切な対応が大切です
白内障による夜間の見えにくさは、運転の安全性に直結する重要な問題です。
対向車のライトがまぶしい、トンネル出口で見えにくい、街灯がにじんで見えるといった症状がある場合は、早めに眼科を受診することをおすすめします。
白内障は誰にでも起こりうる病気ですが、適切な診断と治療により、視力を改善し、安全で快適な運転を取り戻すことができます。
梅の木眼科クリニックでは、白内障の程度を問わず手術できる体制を整えており、患者様一人ひとりの生活スタイルやご事情に合わせて手術のタイミングを相談しながら決定しています。
術後の見え方にご納得いただける様、数ある眼内レンズのなかで、ご要望にお応えできるより適したレンズをご提案いたします。
夜間の運転に不安を感じている方、視界の変化に気づいた方は、ぜひお気軽にご相談ください。
【著者情報】熊谷悠太
日本眼科学会認定眼科専門医
2003年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業、聖マリアンナ医科大学病院眼科学教室入局
2009年 聖マリアンナ医科大学大学院博士課程修了、桜ヶ丘中央病院眼科部長
2016年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院眼科主任医長
2019年 梅の木眼科クリニック開院

