ドライアイなのに涙が出るのはなぜ?乾きとの関係と症状の見分け方のポイント
2026/06/21
「目が乾いているはずなのに、なぜか涙が出る…」
そんな経験をしたことはありませんか?ドライアイと診断されているのに、気づいたら涙がこぼれている。この矛盾に思える症状は、実は多くの患者さんが感じている悩みです。
ドライアイは単純に「涙が少ない病気」ではありません。涙の量だけでなく、質のバランスが崩れることで起こる複雑な疾患です。だからこそ、乾いているはずなのに涙が出るという、一見矛盾した症状が生じるのです。
この記事では、眼科専門医の立場から、ドライアイと涙の関係をわかりやすく解説します。症状の見分け方や、適切な対処法についても丁寧にご説明しますので、ぜひ最後までお読みください。
ドライアイとは何か?涙の仕組みから理解する
まず、ドライアイの本質を理解するために、涙の仕組みから整理しましょう。
涙は、上まぶたの裏側にある「涙腺」から分泌され、まばたきのたびに目の表面全体に広がります。分泌された涙の一部は蒸発し、残りは目頭にある「涙点」という小さな穴から鼻の奥へと排出されます。
目の表面を覆う涙の膜(涙液膜)は、表面から油の層と水の層の2層構造になっています。
この油の層は、まぶたのふちにある「マイボーム腺」から分泌されます。油の層が涙の蒸発を防ぎ、水の層が目の表面を潤す役割を担っています。どちらの層が乱れても、涙液膜は不安定になります。
ドライアイとは、この涙液膜が崩れやすくなり、目の表面が十分に潤わなくなる状態です。
「目がかわく」だけでなく、「ゴロゴロする」「目が疲れる」「まぶしい」「目が痛い」「視界がかすむ」「涙が出る」など、多彩な症状を引き起こします。
日本では推計2,200万人もの患者さんがいるといわれており、さらに増加傾向にあります。
オフィスワーカーを対象とした研究では、全体の60%以上がドライアイまたはその疑いがあることも明らかになっています。
ドライアイなのに涙が出る理由…そのメカニズムを解説
「乾いているのに涙が出る」のは、なぜでしょうか?
これは、目の表面が乾燥することで生じる刺激反応によるものです。涙液膜が不安定になり、角膜(黒目)の表面が乾いて傷つくと、目は「異物が入った」「刺激を受けた」と感知します。
その反応として、反射的に大量の涙を分泌しようとするのです。
この涙は「反射性流涙」と呼ばれます。
通常の涙(基礎分泌)とは異なり、刺激に対して一時的に大量に分泌される涙です。
しかし、この反射性流涙は質が低く、目の表面を長時間潤す力がありません。すぐに蒸発したり流れ出てしまうため、根本的な乾燥状態は改善されないのです。
つまり、ドライアイで涙が出るのは「目が乾いているからこそ起こる反応」です。
涙が出ているからといって、ドライアイが改善しているわけではありません。むしろ、乾燥が進んでいるサインである可能性があります。
外出時に風に当たると急に涙がこぼれる、パソコン作業中に目がしみて涙が出る…こうした経験がある方は、反射性流涙が起きているかもしれません。
「涙が出るからドライアイではない」と思い込んでしまうと、適切な治療が遅れてしまいます。
どう思いますか?「涙が出る=目は潤っている」という思い込みが、診断の遅れにつながることがあるのです。
ドライアイの2つのタイプ〜涙液減少型と蒸発亢進型の違い
ドライアイには、大きく分けて2つのタイプがあります。
それぞれ原因が異なるため、治療のアプローチも変わります。自分がどちらのタイプかを知ることが、適切な対処への第一歩です。
涙液減少型〜涙の量が不足するタイプ
加齢とともに涙腺の機能が低下したり、全身疾患によって涙腺に炎症が起こったりすることで、涙の水分量が減るタイプです。
代表的な原因疾患として「シェーグレン症候群」があります。これは自己免疫疾患の一種で、涙腺や唾液腺が免疫の異常によって攻撃され、強いドライアイや口腔乾燥症状をきたします。
口が乾いたり、関節痛を伴う方は、内科での検査も受けることをお勧めします。
このタイプは、シルマー検査(専用の試験紙を下まぶたに挿入して涙の量を測定する検査)で5mm以下の場合に疑われます。
蒸発亢進型〜涙の質が低下するタイプ
現代のドライアイで最も多いとされるタイプです。涙の量自体は正常でも、油の層を作るマイボーム腺の機能が低下することで、涙が蒸発しやすくなります。
「マイボーム腺機能不全(MGD)」と呼ばれる状態が背景にあることが多く、まぶたのふちが詰まったり、油の分泌が減ったりすることで涙液膜が不安定になります。
パソコンやスマートフォンを長時間使用する方、コンタクトレンズを長時間装用する方に多く見られます。
BUT検査(目を開いてから涙の膜が壊れるまでの時間を測定する検査)で5秒以下の場合、このタイプのドライアイが疑われます。
実際の診療では、この2つが混在しているケースも少なくありません。だからこそ、症状だけで自己判断せず、検査で原因を特定することが大切です。
ドライアイの主な原因〜現代生活との深い関係
近年、ドライアイの患者さんは増加傾向にあります。その背景には、現代の生活環境が大きく関わっています。
3つの「コン」がドライアイを悪化させる
ドライアイを悪化させる代表的な要因として、「エアコン」「コンタクトレンズ」「コンピュータ(VDT作業)」の3つが挙げられます。
エアコン…低湿度・低温は涙の蒸発を促進します。冬場はもちろん、夏のエアコンの効きすぎや送風を直接受ける環境も要注意です。
コンタクトレンズ…涙の膜をレンズの表面と裏側の2層に分けてしまうため、涙の層が薄くなり不安定になります。
コンピュータ(VDT作業)…画面を長時間見続けるとまばたきの回数が減り、涙が蒸発しやすくなります。1日8時間を超えてVDT作業を行う人の発症リスクは1.94倍と報告されています。
その他の主な原因
加齢…涙の量や質は加齢とともに低下します。特に中年以降の女性に多く見られます。
ストレス…涙の分泌は副交感神経が優位なリラックス時に増えます。ストレス状態では交感神経が優位になり、涙の分泌が抑えられます。
薬の副作用…抗不安薬・抗ヒスタミン薬・利尿薬などの一部の内服薬は、涙の分泌を減らす作用があります。
ホルモン変化…女性の更年期障害などによるホルモンバランスの変化もドライアイの原因になります。
40歳以上の成人を対象とした国内の疫学調査では、男性の12.5%、女性の21.6%がドライアイであったことが報告されています。女性の有病率が男性の約2倍近くに上ることがわかります。
症状の見分け方〜ドライアイのサインを正しく読む
「これはドライアイ?それとも別の病気?」
症状だけで判断するのは難しいですが、いくつかのポイントを知っておくと、受診のタイミングを判断しやすくなります。
ドライアイが疑われる代表的な症状
目が乾く、ゴロゴロする感じがある
目が疲れやすい、重い感じがする
まぶしさを感じる
目が痛い、しみる感じがある
視界がかすむ、ぼやける(特に夕方以降)
風に当たると急に涙がこぼれる
パソコン作業中に目がしみて涙が出る
目が赤い、目やにが出る
特に「夕方になると視界がかすむ」「長時間の作業後に症状が悪化する」という方は、ドライアイの可能性が高いと考えられます。
「涙が出る」症状の見分け方のポイント
涙が出る原因はドライアイだけではありません。アレルギー性結膜炎、逆まつ毛、角膜の傷、涙道閉塞(涙の排出路の詰まり)なども涙があふれる原因になります。
ドライアイによる涙の特徴は以下の通りです。
乾燥した環境や風に当たったときに涙が出やすい
目がしみる感覚とともに涙が出る
涙が出た後も、目の乾燥感・異物感が続く
かゆみを伴わない(かゆみが強い場合はアレルギーの可能性)
「涙が出るからドライアイではないはず」と思い込んでいた患者さんが、検査を受けたところ角膜に傷が見つかったというケースは珍しくありません。症状だけで自己判断せず、眼科での検査を受けることが大切です。
梅の木眼科クリニックで行うドライアイの検査と治療
当院では、症状だけで判断せず、客観的な検査を組み合わせてドライアイの原因を丁寧に評価します。
当院で行う主な検査
ドライアイの検査は、いくつかの方法を組み合わせて行います。それぞれの検査が、異なる側面からドライアイの状態を評価します。
視力検査…ドライアイ以外の眼疾患が隠れていないかも含めて確認します。
顕微鏡検査(角膜の傷の確認)…フルオレセインという染色液を使用し、角膜表面の傷の有無や程度を細隙灯顕微鏡で詳しく観察します。
BUT検査(涙の質の検査)…目を開いてから涙の膜が壊れるまでの時間を測定します。5秒以下の場合、ドライアイが疑われます。
シルマー検査(涙の量の検査)…専用の試験紙を下まぶたに挿入し、5分間でどれだけ涙が分泌されるかを測定します。5mm以下の場合、涙の量が不足していると判断されます。
当院の治療方針
検査結果と症状、生活環境を総合的に評価したうえで、患者さん一人ひとりに合った治療をご提案します。
点眼治療
軽症の場合は、涙を補う点眼薬や目の表面を保護する点眼薬で症状の改善を図ります。さまざまな種類の点眼薬があり、病態に合わせて使い分けたり、組み合わせたりします。
涙点プラグ治療
点眼治療のみでは十分な効果が得られない場合に行います。涙の排出口である「涙点」にプラグを挿入し、涙が流れ出るのを抑えることで、目の表面を潤わせる治療法です。
点眼麻酔下で行う比較的負担の少ない処置で、角膜の傷が改善し、症状が軽減するケースも多くあります。
「乾くだけ」「疲れ目だと思っていた」という方が、検査で角膜に傷が見つかることも少なくありません。
ドライアイは慢性的に進行しやすく、放置すると知らないうちに症状が悪化することがあります。早めの受診と適切な治療が、目の健康を守る大切な一歩です。
日常生活でできるドライアイの対策
治療と並行して、生活環境を整えることもドライアイの改善に役立ちます。
意識的にまばたきをする…パソコンやスマートフォンの使用中は、意識的にまばたきの回数を増やしましょう。
画面から適度に目を休める…1時間に1回程度、遠くを見たり目を閉じたりして目を休めることが大切です。
室内の湿度を保つ…加湿器を使用したり、エアコンの送風が直接目に当たらないよう工夫しましょう。
コンタクトレンズの装用時間を減らす…可能な日はメガネに切り替えるなど、目への負担を軽減しましょう。
十分な睡眠とストレス管理…睡眠不足やストレスは涙の分泌を減らします。規則正しい生活を心がけましょう。
これらの対策は、あくまでも症状の悪化を防ぐためのものです。すでに症状が出ている場合は、自己対処だけに頼らず、眼科での診察を受けることをお勧めします。
まとめ〜「涙が出る」もドライアイのサインかもしれません
ドライアイなのに涙が出る理由、おわかりいただけましたか?
目の乾燥が進むと、角膜への刺激から反射的に涙が分泌されます。この「反射性流涙」は質が低く、根本的な乾燥状態を改善するものではありません。
「涙が出るからドライアイではない」という思い込みが、適切な治療の機会を逃してしまうことがあります。
ドライアイは慢性的に進行しやすい疾患です。放置すると角膜に傷が生じ、視力低下や合併症の原因になることもあります。
症状が気になる方は、ぜひお早めに眼科へご相談ください。当院では、症状・検査結果・生活環境を総合的に評価し、患者さん一人ひとりに合った治療をご提案しています。
「たかが目の乾き」と放置せず、早期の検査と適切な治療で、快適な毎日を取り戻しましょう。
梅の木眼科クリニックへのご相談はお気軽に
目の乾き、違和感、疲れ、涙が出るなどの症状でお悩みの方は、梅の木眼科クリニックへお気軽にご相談ください。
院長・熊谷悠太(眼科専門医)が、丁寧な検査と診察で原因を見極め、最適な治療をご提案します。
「我慢できるから大丈夫」と放置せず、早めのご受診をお待ちしております。
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【著者情報】熊谷悠太
日本眼科学会認定眼科専門医
2003年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業、聖マリアンナ医科大学病院眼科学教室入局
2009年 聖マリアンナ医科大学大学院博士課程修了、桜ヶ丘中央病院眼科部長
2016年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院眼科主任医長
2019年 梅の木眼科クリニック開院

